米国では賃金の伸びが鈍化し、この10年余りの間でも際立って低くなっており、若年労働者がその影響を最も強く受けている。JPモルガン・チェース・インスティチュートがリポートで明らかにした。

29日のリポートによれば、全ての年齢層で新型コロナ禍のピーク以降に賃金減速が見られるが、最も顕著なのは25-29歳の層。

9月には、この層の年間の所得上昇率が5.2%に減速。同社がデータ収集を開始した2011年以降で有数の低い伸びを記録した。当時は世界的な金融危機からの回復途上にあった。

「こうした動向は全ての人の購買力鈍化を示すとともに、キャリア初期の賃金上昇ペースが著しく勢いを欠いていることを物語る」とリポートは指摘した。

 

若年層の動向は労働市場全体の状況を示すシグナルになり得ると、研究者らは指摘する。雇用市場全般は現在、「low hiring and low firing(採用も解雇も低水準)」が特徴だ。

労働市場のダイナミズム欠如は、雇用の安定を失うことへの不安から現在の職にとどまる労働者が増えていることにも表れている。

リポートは、こうしたことがキャリア初期段階にある層にとって厳しい状況を生み出していると指摘する。若年層は転職を通じて収入を上げ、昇進の機会を探ることが多いが、採用凍結が広がっている状況ではそれも難しい。キャリア初期の仕事の一部が人工知能(AI)に取って代わられつつあることも、この層の課題だ。

「所得の伸びが加速しなければ、若年層は自らの財務目標に家計が追い付くまで、さらに長い期間待つ必要があるかもしれない」とリポートは指摘している。

原題:Young US Workers See Downshift in Pay Gains Amid Job Scarcity(抜粋)

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