マイナ救急が始まった - で、どんな制度なの?

マイナンバーカードに保険証機能を取り込んだ「マイナ保険証」を利用した「マイナ救急」制度が、2025年10月1日からほぼ全国(注1)で実施されている。

マイナ救急とは、救急搬送時に救急隊員が原則として傷病者(救急の対象者)の承諾を得て(注2)、マイナ保険証を使って傷病者の氏名・健康保険情報、通院歴、薬の処方歴などを閲覧する制度のことである。

搬送先の選定、病歴や服薬歴を反映した救急処置などが可能になり、救急医療に貢献するものとして期待されている。

実際に全国展開前に地域限定で行われた実証実験では、傷病者の病歴や薬剤情報の収集に役立ったなど、成果があったことが報告されている。

特に基礎疾患のある人や、一人暮らしの高齢者などには役立つ制度と思われるが、まだ制度が発展途上にあることなどもあり、マイナ救急で取得される情報などについて注意すべき点がある。本レポートでは主な注意点について記す。

なお、マイナンバーカードを持っていても、それに健康保険証機能を登録していなければ、マイナ保険証ではないのでマイナ救急には使えない、という点は最初にお伝えしておく。

(注1)消防本部の全て、常時運用救急隊の98%で実施(政府広報オンライン「マイナ救急で救急搬送がスムーズに!命を守るマイナ保険証の新しい活用法」(2025年8月7日)による)
(注2)患者が意識不明等により同意取得が困難な場合で、患者の生命や身体を保護する必要がある場合は、救急隊員が患者の同意なしに医療情報を閲覧することがある。

当面はスマホ保険証には(救急車では)非対応

制度発足時点では、救急車にカードリーダーが備え付けられ、カードリーダーでカード型のマイナ保険証を読み込み、券面の写真で本人確認をするというシステムになっている。

従って、健康保険証機能登録済みのマイナンバーカードを取り込んだスマートフォン(いわゆる「スマホ保険証」)でマイナ救急を受けることはできない。

機材の問題なので将来解決されるかもしれないが、当面はマイナンバーカードそのものが必要である。

通院・手術歴の記録範囲は5年まで - 特に健診を受けていない人は注意を

マイナ救急では、救急用サマリーという、最初に救急隊員が見るための資料と、オンライン資格確認等システムで確認可能な情報の2種類の情報が提供される。

救急用サマリーには3か月の受診歴、5年間の手術歴しか記録されない。

それ以前に大きな手術をしていて、年に1回経過観察で通院している、といった場合には、その手術や経過観察をしている病院が救急用サマリーには現れないことも考えられる。

またダイジェスト版の救急用サマリーではないオンライン資格確認等システムでも、過去5年間の受診歴しか保有していないため、それ以前の既往歴は受診歴には出てこない。

40歳以上の人で特定健診または後期高齢者健診を受けている人は、その健診情報が提供されるので、その中に既往症情報があるが、健診を受けていない人については5年より前の既往症情報は提供されないことになる。

現在も通院を頻繁にしている人は除いて、自身が昔受けた大きな手術、昔かかった大きな病気、それらに対応した病院などについては、お薬手帳のメモ欄などに書いて携行したほうがよいかもしれない。

アレルギーや検査の情報はマイナ救急では出てこない

マイナ救急では、アレルギーや過去の感染症の情報は提供されない(救急用サマリーだけでなく、オンライン資格確認等システムでも表示されない)。

アレルギーは場合によっては命に係わる事項であり、また過去の感染症情報も治療上重要な役割を持つ。

電子カルテ情報共有サービスというシステムが供用開始されたことにより、これらの情報がオンライン資格確認等システムで扱えるようになった。

このため、日本救急医学会および日本臨床救急医学会の意見をもとに、これらの情報をマイナ救急の救急用サマリーに追加する方向で、厚生労働省傘下のワーキンググループにより検討が進められている。

早期の対応を願うが、当面はこちらもメモを携行するなどの対応が必要であろう。

以上、現状におけるマイナ救急の利用に関する注意点をまとめた。今後の制度の発展普及の中で、これらの点が必要に応じて改善され、救急時により有益な情報が短時間で提供されるようになることを望みたい。

【参考文献】
厚生労働省(2024a) 厚生労働省 第20回健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ(2024年1月24日) 資料1「全国で医療情報を確認できる仕組み(ACTION1)について」

厚生労働省(2024b) 厚生労働省 第23回健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ(2024年12月2日) 資料3「救急時医療情報閲覧における利用可能な医療情報の追加について」

(※情報提供、記事執筆:第一生命経済研究所 総合調査部 政策調査G 研究理事 重原正明)

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