(ブルームバーグ):パリのルーブル美術館で19日、窃盗団がフランス王族のネックレスやティアラ、イヤリングなどを奪った。侵入から逃走までわずか7分の犯行だった。
電動工具ディスクグラインダーを使って館内に侵入した窃盗団は、近くに展示されていた「レジャン」の名で知られる約140カラットのダイヤモンドには手を付けず、1000個以上のダイヤがあしらわれた王冠を落としたまま逃走した。
現場には黄色いベストが残され、DNAの痕跡があった。そのため、大失態を演じた警察と政治家の間では、盗難品が恒久的に失われる事態は避けられるとの期待も出ている。
ヌニュス内相は「犯人、そして何より盗まれた品々をかなり早く見つけ出せると望んでいる」と述べた。
スクーターで逃走
パリ検察のロール・ベキュ検事は、19日日曜日の午前9時30分ごろ、2人の実行犯が運搬用クレーンを作動させたと明らかにした。2人は共犯2人の助けを得て2階の窓からルーブル美術館の「アポロンの間」に侵入。9時34分に複数の警備員を脅して展示ケース2台を破壊した。
盗まれたのは、マリーアメリー王妃とオルタンス王妃のコレクションに含まれるティアラとサファイアのネックレス、イヤリング、マリールイーズ皇后の所有していたエメラルドのネックレスとイヤリング、聖遺物を収めたブローチ、さらにウジェニー皇后のティアラと大型のコサージュ飾りだった。
窃盗団は犯行後、ヤマハ発動機のスクーター「TMAX」で逃走した。警察の労働組合UNSAのマルク・オカール氏は、民間警備員は強盗阻止のために危険を冒すことは求められていないと説明した。
ダルマナン法相はフランス・アンテルのラジオ番組で「われわれは失敗した」と述べ、この強盗事件は「フランスについて嘆かわしい印象を与える」と認めた。
警察労組オルタナティブ・ポリスの報道担当ベンジャマン・カンブリーブ氏によれば、ルーブルの警備は通常、館外の巡回と映像監視を行っているが、日曜で作業予定のない日だったためクレーンが動かされたことに誰も気付かなかった。
それでも同氏は、窃盗団が逃走中にウジェニー皇后の王冠を落とした点など、犯行の素人ぶりに希望を見いだしている。この王冠には1354個のダイヤと56個のエメラルドがあしらわれていた。
当局は防犯カメラの映像や、犯行グループが焼却を試みて失敗したDNA反応があったベストや毛布、クレーンなどの証拠を分析している。
文化省によると、館内では警備手順が順守されており、窓や展示ケースが破壊された際には警察と連動する警報が作動し、勤務中の職員5人は来館者の避難誘導に当たった。
ベキュ検事はBFMテレビとのインタビューで、「コレクターからの依頼による犯行であれば、その人物やスポンサーを特定すれば宝飾品は良好な状態で見つかるだろう」と述べる一方で、「過去の事例のように、宝石や真珠、希少金属といった宝飾品の素材を狙い犯行に及んだ可能性もある」と語った。
マクロン大統領は前者であってほしいとした上で、盗品を取り戻し「犯人が法の裁きを受けることを望む」とX(旧ツイッター)に投稿した。
ヌニュス内相はフランスアンフォとのインタビューで、「脆弱(ぜいじゃく)性があるため、すべての美術館で警備を強化する措置に取り組んでいる」と話した。同相は文化省との緊急会合を20日に開いた後、美術館など文化施設を対象に現行の安全対策を検証し、改善策を提言する監査に着手するよう指示した。
原題:A 7-Minute Louvre Heist Leaves Behind DNA and Dropped Crown (1)(抜粋)
(最終段落に内相のコメントを追加して更新します)
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