スノーボードブーツの快適さは、根っからのスキーヤーでさえスノーボードに転向してもいいかもしれないと思わせるほど魅力的だ。

硬いシェルをこじ開けたり、バックルを締めたり、足首に面ファスナーをきつく巻き付けたりする必要はない。代わりに、柔らかいブーツに足をすっと滑り込ませ、上部と下部のダイヤルを回してブーツシェルにジグザグ状に張り巡らされたワイヤを調整すれば、完璧なフィット感が手軽に得られる。

こうしたワイヤとダイヤルでブーツのフィット具合を調整する仕組み「ボア・フィット・システム」は2001年に開発された。しかし、スノーボード用ブーツよりも大きな力が加わるアルペンスキー用ブーツに組み込まれるまでには、20年余りと1万8000時間超の開発期間を要した。

この名称は、ワイヤがブーツを締め付ける様子が大蛇に似ていることに由来する。

サロモンの新型スキーブーツ「S/Pro Supra Dual Boa」

従来の4バックル式スキーブーツは「痛みなくして得るものなし」という概念に基づいていたが、ボアの登場で急速に廃れつつある。

昨シーズンには、フィッシャー、K2、サロモンなど複数の老舗メーカーが、下部の2バックルを微調整ダイヤルに置き換えたハイブリッド型ボアデザインを導入。特に足の甲が高い人や足幅の狭い人に、より均一でカスタマイズされたフィット感を実現した。

ただ、コアなスキーヤーの中には、昔ながらのバックルで足を固定するシステムの方がパフォーマンス面で優れると感じる人もなお存在していた。

サロモンが初めて投入するバックルフリーのデュアルダイヤル式ボアブーツ「S/Pro Supra Dual Boa」は、そうした懐疑派をも納得させるかもしれない。価格は840ドル(約12万7000円)。

上部カフと下部シェルに内蔵されたワイヤをそれぞれ独立して締められるため、フィット感を細かく調整できる。100本超のステンレス鋼繊維から成るワイヤは、アルペンスキーに必要な引張強度の2倍を誇り、ケーブルカーをつるせるほどの強度を持つ。上部カフのダイヤルを回すと、ブーツが足を手袋のように包み込む。

その結果、足とブーツの接触がより正確かつ均一になり、スキーへのパワー伝達とエッジコントロール性能が向上。下部シェルの精密なフィット感と相まって、あらゆる地形・条件下でのレスポンスが一段と高まる。

プロスキーヤーがこのモデルを履くようになれば、バックル式の時代は終わりを迎えるだろう。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:The Era of Truly Comfortable Ski Boots Has Officially Arrived(抜粋)

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