(ブルームバーグ):21日の日本市場では株式が上昇、日経平均株価は連日で史上最高値を更新した。今夜発足する「高市内閣」による政策期待から買い注文が先行した。政局安定を好感して債券は上昇(金利は低下)している。
日経平均は初の5万円台に一時接近した。午後は売りが膨らみ、衆議院で高市早苗自民党総裁が首相に選出された後に下落する場面があった。債券相場は上昇。米長期金利の低下や政治の安定に加えて、財務省出身の片山さつき氏の財務相起用が報じられたことで財政拡張懸念も後退した。円相場は対ドルで151円台半ばに下落している。

「高市内閣」の主要閣僚の顔ぶれが見えつつあり、金融市場は政策を巡る期待から具体策を見極める段階に入りつつある。日米欧の金融政策決定ウィークを来週に控えている上、米政府機関閉鎖の市場への影響も見逃せない。
大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリスト兼テーマリサーチ担当は21日付リポートで高市氏について、デマンドプル(需要主導)型インフレを志向しているとして「拡張的な財政政策と緩和的な金融政策で株高になりやすい」と指摘した。需要不足は財政投資や大阪副首都構想で埋めていくことが想定されるとしている。
株式
東京株式相場は続伸。日経平均は心理的節目の5万円に接近した。米国企業の堅調な決算や米中貿易摩擦の緩和、高市新政権による政策期待が重なり、指数を押し上げたが、午後にTOPIXを含めて下落に転じる場面があった。
指数が伸び悩んだことについて、アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、イベントドリブン戦略の投資家を中心に利益確定売りが出たと指摘。物色の対象から外れていた内需系の銘柄を中心に、利益確定売りの受け皿になる要素があり、下落トレンド入りはしないだろうとした。
ピクテ・ジャパンの田中純平投資戦略部長も、特段の材料は出ていないとして「期待先行で日経平均が5万円目前に迫り、後場はその反動もあって利益確定売りが出た可能性がある」としている。
人工知能(AI)関連の一角に買いが先行したほか、情報・通信のほか化学や鉄鋼などの素材、商社、医薬品など内外需とも幅広く買いが優勢となっている。
一方で高市氏政策への期待で上昇していた銘柄が、イベント通過を受けて軒並み下落した。防衛関連では三菱重工業やIHI、核融合関連の助川電気工業が下げに転じた。
いちよしアセットマネジメントの秋野充成社長は「高市政権となれば財政拡大により、石破政権時代より日本の景気が良くなる可能性が高まる」と述べた。米国の利下げ期待や過剰流動性も後押しすることで、「日経平均は年末までに5万2000円まで上昇する余地がある」と予想した。
債券
債券相場は上昇。原油先物相場下落で米長期金利が低下した流れを引き継いだ。片山さつき元地方創生担当相の財務相への起用が固まったとの報道も買い材料視された。
農林中金全共連アセットマネジメントの長友竜馬シニアファンドマネジャーは、高市氏が首相に指名されたことについて「連立を組む日本維新の会が主張する消費減税には慎重な姿勢を示しており、今のところ過度の財政拡張には向かっていない」と語った。
また財務相への起用が報じられた片山さつき参院議員について「財務省出身者とはいえ、財政拡張志向が強いとの評価もあり、一定の警戒感は残る」と指摘。超長期金利は低下しても緩やかなペースにとどまるとの見方を示した。
新発国債利回り(午後3時時点)
為替
外国為替市場の円相場は対ドルで151円台半ばに下落。株価の上昇を受けてリスクオンの円売りが優勢となっている。高市氏の首相指名で財政拡大に対する根強い懸念も売りにつながった。
ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、高市氏の首相指名でやや材料出尽くし感が出ているが、「長い目で見れば、高市氏の政策は財政拡大の方針なので円売り圧力は続く」と予想。その上で、目先は来週の日銀金融政策決定会合に焦点が向かうとの見方を示した。
--取材協力:横山桃花、我妻綾、近藤雅岐.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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