米国は、エヌビディア製半導体をアラブ首長国連邦(UAE)向けに数十億ドル規模で輸出することを承認した。米国の人工知能(AI)外交戦略のモデルとなる可能性があるものの、論争を呼んでいる取引の実施に向けた最初の一歩となる。

米商務省産業安全保障局(BIS)は5月に合意された米国とUAEのAI協定に基づき、AI半導体で世界をリードするエヌビディアの輸出ライセンスを最近発給した。機微な問題だとして事情に詳しい関係者が匿名を条件に明らかにした。

米当局者の1人によれば、この承認はUAEが米国内で同じ規模の投資を行う具体的な計画を示した後に出されたという。承認された半導体輸出の正確な出荷額やUAE側の投資額には触れなかった。

UAE側の担当者はコメント要請に応じず、エヌビディアもコメントを控えた。一方、米商務省の報道官は、同省として「変革的な米UAE間のAIパートナーシップ協定に全面的に取り組んでいる」と述べた。

中国の影響

今回のライセンス発給は、トランプ大統領の2期目開始後、エヌビディアのAI半導体をUAEに販売する初めての認可となり、両国間のAI協定が前進している具体的な証しとみられる。UAEは首都アブダビに5ギガワット規模のデータセンター建設に取り組み、米オープンAIを迎え入れる計画。

ただ、こうした取り決めはワシントンで波紋を広げている。トランプ政権内や議会の一部では、米国外、特に中国が強い経済・ビジネス関係を築いている地域にこれほど大規模な施設を建設する計画を疑問視する声が上がっている。

エヌビディア製半導体の確保は、UAEにとって最優先課題の一つ。UAE政府内では、米国側の承認手続きが遅いとの不満も出ていた。UAEが国内外で巨額のインフラ投資を進める中で、AIは最重要分野の一つに位置付けられている。

このAI取引の背景となっているのは、UAEが今後10年間で総額1兆4000億ドル(約214兆円)を米国内に投資するという約束だ。ただし、この巨額投資の具体的な内訳は明らかにされていない。

一方、米国側は先端AI半導体を年間最大50万個まで輸出許可する計画で、そのうち5分の1がアブダビのAI大手G42向けとされていた。

しかし、関係者によれば、最初に発給されたライセンスにはG42向けの半導体は含まれていない。アブダビでの施設建設でオープンAIと連携しているG42は、コメント要請に応じなかった。

UAEは受け取る半導体と同額を対米投資として拠出することで合意している。追加のライセンスがいつ発給されるのかは不透明で、UAE側の具体的な投資計画の進展に左右される見通しだと関係者は説明した。

原題:US Approves Some Nvidia UAE Sales In Step of Trump AI Diplomacy(抜粋)

(詳細を追加して更新します)

--取材協力:Abeer Abu Omar、Zainab Fattah.

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