(ブルームバーグ):米原子力エネルギー企業ナノ・ニュークリア・エナジーは売上高がなく、米原子力規制委員会(NRC)からの認可も取得しておらず、稼働中の原発もない。にもかかわらず、同社のバリュエーションは23億ドル(約3500億円)を超える水準に押し上げられた。
背景にあるのは、人工知能(AI)が今後、膨大な新規電力源を必要とするとの見方だ。機械学習システムを動かすデータセンターの建設をハイテク大手が急ぐ中、電力契約価格が上昇し、原子力関連銘柄はまるで未来への切符のようにみえる。
こうしたAI絡みの熱狂は1社にとどまらない。オープンAIのサム・アルトマン氏が支援するオクロの株価は過去1年に1000%余り上昇。ニュースケール・パワーとナノ・ニュークリアの株価はいずれも3倍となった。原子炉燃料を販売するセントラス・エナジーも400%超の上昇となっている。

原子力関連セクターを長年追ってきたアナリストからは、足元の楽観論は時期尚早だとの声も上がる。バンク・オブ・アメリカ(BofA)のディンプル・ゴサイ氏は先週、オクロとニュースケール・パワーの投資判断をいずれも引き下げ、両社のバリュエーションは「現実から離れ先走りしている」と警告。長い準備期間や規制上の障壁、燃料供給を巡る不透明さなどから、2030年代に入ってもすぐには商業化が実現しない可能性があると述べた。
ゴサイ氏によると、次世代原子力エネルギーに取り組む企業の道のりはまだ長い。普及は早くとも2035年以降、本格的な定着は2040年頃になるという。ゴサイ氏は「理論上では、今これらの株を買う理由はない」と述べ、「いずれ常識が勝つ時が来るはずだ」と付け加えた。
旺盛な需要に関するストーリーには説得力があるが、課題の大きさも同様に明白だ。ジェフリーズのアナリスト、ポール・ジンバルド氏は、テクノロジー企業が求めているのは「5年後や10年後ではなく、今すぐ使える電力」だと指摘する。「ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)は、当面の電力確保のためならほぼいくらでも支払う構えだ。しかし新しい原子力はそれを提供できない」とジンバルド氏。「新しい原子力はスピードを提供しない。そこが問題だ」と話した。
原題:Nuclear Companies Without Reactors Cash In on AI Boom(抜粋)
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