パレスチナ自治区ガザで2年間続く戦争の終結に、ガザを実効支配するイスラム組織のハマスとイスラエルがともに慎重ながら前向きな見解を示した。トランプ米大統領が提示した和平案を巡る交渉は3日目に入り、高位の仲介役も交渉会場に到着した。

ハマス代表団のメンバーで、6日からエジプトのシャルムエルシェイクで交渉に参加しているタヘル・アルヌヌ氏は「全当事者の間に楽観的な空気が広がっている」と発言。人質と囚人の交換、イスラエル軍撤退の詳細が現在議論されていると続けた。

トルコのフィダン外相は8日遅く、停戦を発表できるようになるには「あと1つか2つ」確認が必要な項目があると述べ、人質と囚人の交換条件やイスラエル軍の駐留と並び、人道支援の拡大が議論されていると明らかにした。

フィダン氏はエジプトでの交渉に参加しているカリン国家情報機構(MIT)長官との会談後にアンカラで、「当事者は真剣な意思を示している。それが見られている」と語った。

イスラエル軍の攻撃で煙が上がるガザ(7日)

事情に詳しい関係者によれば、トランプ氏が先週初めに公表した20項目からなる和平案の実現に向け進展が見られたことを受けて、米国はウィトコフ中東担当特使と、トランプ氏の顧問で娘婿のジャレッド・クシュナー氏を協議に派遣した。関係者は非公表の交渉について話しているとして、匿名を要請した。

トランプ氏は8日、ホワイトハウスで、「週の終わりごろ、日曜になるかもしれない」が、中東を訪問する可能性があると述べた。また、「われわれの最終交渉の相手はご存じの通りハマスだ。そして順調に進んでいるようだ」と語った。

イスラエルもまた、8日の協議にデルメル戦略問題担当相を送り込んだ。デルメル氏はネタニヤフ首相が最も信頼を置く1人で、協議の方向性に対する自信が示唆される。

エジプトのシシ大統領は、和平交渉について「前向きな」知らせを受けていると説明し、合意成立時の調印式にはトランプ氏をエジプトに招く意向を示した。

ハマスは2023年10月7日にイスラエル南部を襲撃した際に連行した残りの人質全員を解放することを提案した。だが、イランの支援を受け、米国と欧州連合(EU)からテロ組織に指定されているハマスは、武装解除といったその他の項目には合意していない。

ハマスのアルヌヌ氏は、「戦争終結のメカニズム」と「占領軍の撤収」に関する協議が集中的に行われていると説明した。ただ、トランプ氏の案ではまず戦争終結を宣言し、第1段階ではイスラエル軍の部分的な再配置を行うとしかしていないため、アルヌヌ氏の見解は履行の順序が後で対立点となるリスクを示す。

アルヌヌ氏はまた、トランプ氏の案に従って48人の人質解放と引き換えに、イスラエルに釈放を求めるパレスチナ人囚人・拘留者の候補者リスト1950人分をハマスは手渡したと明らかにした。残る48人の人質のうち、存命は20人程度とみられている。ハマス幹部のファウジ・バルフーム氏は7日、「公正な人質交換」を望むと述べ、高位メンバーの釈放を目指す意図を示唆した。

イスラエル安全保証閣議のメンバー、ガムリエル科学技術相は交渉を「慎重ながら楽観」していると述べつつ、釈放対象について一部のパレスチナ人囚人は論外だと一蹴。釈放者のリストは閣議の承認も必要になると付け加えた。

原題:Hamas, Israel Upbeat as Senior Negotiators Join Peace Talks (2)、Trump Says He May Travel to Middle East This Weekend(抜粋)

(6段落目にトランプ氏の中東訪問に関するコメントを追加して更新します)

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