三井住友トラストグループ傘下の運用会社、三井住友トラスト・アセットマネジメントは、個人向け事業を強化する。公募投資信託での複数の主力商品を「1兆円ファンド」にまで拡大させ、5年以内に個人向け公募投信の純資産総額で国内トップ3を目指す。

1日付で就任した小林隆宏社長(51)がブルームバーグとのインタビューで明らかにした。個人による「貯蓄から投資」への流れ加速を受けて、「機関投資家をサポートしてきたノウハウを、より多くの顧客に訴求できるタイミングが訪れた」と述べた。

三井住友トラストAMの小林隆宏社長

最近の株高や新たな少額投資非課税制度(NISA)の浸透を背景に、大型ファンドの増加が続いている。モーニングスター・ジャパンのデータによると、8日現在で資産残高が1兆円を超えるファンド数は11本に上る。

ただ、1兆円ファンドが全体に占める比率はほんのわずかだ。投資信託協会のデータによると、8月末時点の公募投信の本数は5806本ある。国内では海外と比べてファンド1本当たりの運用残高の低さが指摘されており、金融庁も問題視してきた。ファンド規模の拡大で運用コスト低下も見込めるなど個人投資家にとってのメリットもある。

小林氏によると、1兆円ファンドの候補は「世界経済インデックスファンド」と「次世代通信関連 世界株式戦略ファンド」の2本。資産残高(8日時点)はそれぞれ約4600億円と約5700億円。どちらもNISAの積み立て投資枠もしくは成長投資枠を利用できる。

営業担当を継続的に増員し、地方銀行など粘着性の強い資金を持つ販売会社に対して、きめ細やかな商品説明やマーケット情報の提供などで支援する意向を示した。両ファンドで2029年3月期までの1兆円ファンド達成を目指す。

8月末時点の運用会社別の国内公募投信純資産総額(残高)で、三井住友トラストAMは7位。

同社は信託銀行系として多くの機関投資家を顧客として抱える強みを持つ。ただ、プロ向け事業は競争が激しく、利益幅は小さい。同月末の資産運用総額約109兆円のうち、個人顧客の比率は1割弱だが、商品別収益の6割程度を個人向けが占めるという。

高市新総裁で長期国債動向に懸念も

4日の自民党総裁選で高市早苗新総裁が誕生したことに伴う株高については、運用業界として「非常に望ましい」と語った。「企業のガバナンス改革で実が伴ってくればよりよい方向に向かうだろう」との期待感を示した。

一方、欧州で政治と財政のリスクが意識され、長期金利が神経質な動きを見せていることに言及し、積極財政派と目される高市氏に連想が飛び火することで「日本の長期国債の動きがボラタイルになる懸念がテールリスクとしてあり得る」と述べた。

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