暗号資産(仮想通貨)で一旗揚げる夢を追い、米ニューヨーク大学を中退したシェイン・コプラン氏だったが、その数年後には家賃を支払うために家財を売らなければならないほど生活が困窮していた。

仮想通貨絡みの詐欺に嫌気が差した同氏は2019年、経済学者ロビン・ハンソン氏が提唱する予測市場と、それが社会の予測能力向上に寄与する可能性について探り始めた。

「これはホワイトペーパーの中だけにとどめておくには惜しすぎるアイデアだ」。コプラン氏はX(旧ツイッター)への投稿で当時をこう振り返っている。その後、世界を新型コロナウイルス禍が襲う。コプラン氏の目には、巣ごもり中の人々が現実の出来事について賭けを行うアプリを開発する好機と映った。バスルームを作業場にしてプラットフォーム「ポリマーケット」の構築に着手し、2020年6月にサービスを立ち上げた。

道のりは平坦ではなかった。まずは動き、後で許可を申請するという同社の姿勢は、たびたび規制当局との衝突を招いた。取引所として登録していなかったため、米国居住者の利用を数年間禁止せざるを得なかった。さらに2024年の米大統領選挙からわずか1週間後、コプラン氏の自宅は連邦捜査局(FBI)の家宅捜索を受けた。ポリマーケット上では大統領選の期間中に30億ドル(約4600億円)超の賭けが行われた。

それでもコプラン氏とポリマーケットは目下、波に乗っている。ニューヨーク証券取引所を傘下に持つインターコンチネンタル取引所(ICE)は7日、ポリマーケットに最大20億ドルを出資する計画を発表。合意では同社の企業価値を80億ドルと評価した。これに伴い、ブルームバーグ・ビリオネア指数でコプラン氏(27)は自らの成功により最年少のビリオネアとなった。

ポリマーケットの広報担当者はコメントを控えた。

同社にはトランプ大統領の息子、トランプ・ジュニア氏がパートナーを務める1789キャピタルが出資。ジュニア氏は8月にポリマーケットの顧問に就任している。同氏はまたポリマーケットの競合カルシの顧問も務めている。

ICEの出資でポリマーケットとワシントンとのつながりは一段と強まる可能性がある。ICEのジェフリー・スプレッチャー最高経営責任者(CEO)は、トランプ政権で中小企業庁長官を務めるケリー・ロフラー元上院議員の夫だ。

ポリマーケット創業者のコプラン氏(左)とICEのスプレッチャーCEO

原題:Polymarket CEO Is Youngest Self-Made Billionaire on ICE Deal (1)(抜粋)

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