今年前半の世界貿易は予想外に堅調だったものの、来年はトランプ米大統領の関税政策の影響が顕在化し、伸びが大きく鈍化する。世界貿易機関(WTO)が7日発表した報告書でこうした見通しを示した。

同報告書によれば、モノ(財)の貿易は2025年に前年比2.4%増える見通し。8月時点の予測(0.9%増)を上方修正した。

一方で26年については0.5%増と、従来予想(1.8%増)から引き下げた。引き下げ幅は1.3ポイントで、25年予想の引き上げ幅1.5ポイントと対照的だ。

 

今年と来年の見通しが大きく食い違ったことについて、WTOは「トランプ政権の国別・セクター別関税の本格的影響が来年に持ち越された可能性がある」と指摘。

「関税が引き上げられ、貿易政策の不透明感が強く続く中で、在庫の取り崩しや世界経済の減速に伴い前倒し需要が後退する」と予想した。

先進国経済では、企業景況感や消費者信頼感の低下、雇用・所得の伸び鈍化など、製造業や貿易の弱さを示す兆候が見られるという。

AI関連製品 

WTOのオコンジョイウェアラ事務局長は記者会見で、「一方的」な貿易措置にもかかわらず貿易量が堅調だったのは、世界貿易システムに安定をもたらす「中核」グループが存在することを示していると語った。世界通商の約4分の3はなおWTOルールの下で行われていると説明した。

WTOによると、25年1-6月(上期)に世界貿易を主に押し上げたのは人工知能(AI)関連製品の輸出。半導体やプロセッサー、コンピューター完成品、クラウドサーバー、通信機器など約100品目の貿易額は前年同期比で20%余り増加したという。

一方、AIに関連しない品目の伸びは4%弱にとどまった。

報告書は、1-6月にAI関連製品が世界のモノの貿易量全体に占めた割合は1割に満たなかったが、「貿易量伸び率の半分近くに寄与した」と分析。

26年については、「世界経済の冷え込みに加え、関税引き上げの本格的な影響が1年を通して続く」ため、貿易の伸びが鈍化するとの見方を示した。

原題:WTO Sees Full Impact of US Tariffs Hitting Trade Growth in 2026(抜粋)

--取材協力:Zoe Schneeweiss、Craig Stirling.

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