(ブルームバーグ):「パーシャルスピンオフ」と呼ばれる新制度を使って特定事業を切り離し、株式上場させたソニーグループに続く企業が増えるにはしばらく時間がかかりそうだ。
ソニーGの金融部門であるソニーフィナンシャルグループ(FG)は9月下旬、新株の発行や売り出しを伴わない「直接上場(ダイレクトリスティング)」の形式で東京証券取引所プライム市場に上場した。日本初のパーシャルスピンオフ制度を活用した事例で、直接上場も2000年以降で初めてだ。
同制度は23年度に導入され、経営・資本・上場の独立を図る通常のスピンオフと違い株式の一部持ち分を親会社に残す仕組み。企業に組織再編を促すと共に、要件を満たせば親会社の譲渡損益、現物配当を受けた株主のみなし配当を非課税にする税制上の恩典を与えた。28年3月までの時限措置だが、多くの企業が活用するには一定の障壁があるとの見方が市場関係者の間で浮上している。
ネックと見られているのは、24年度のパーシャルスピンオフ税制の見直しで加わった「新事業活動」要件だ。従来は、スピンオフ企業は主要な事業開始から10年以内であるほか、事業発展が見込まれる点などが税制恩典の認定要件だった。今後は主要事業が新たな商品や技術、サービスにつながることも求められる可能性がある。
ゲームやエンターテインメント、エレクトロニクスに注力したいソニーGが新制度の活用を決めたのは新事業活動要件が加わる前だった。同社以外では、総合化学のレゾナック・ホールディングスがパーシャルスピンオフを検討している。
東京海上アセットマネジメントの若山哲志シニアファンドマネジャーは、この新要件により企業がパーシャルスピンオフを使いにくくなる可能性があると指摘。一方、総合電機など複数の事業を抱えるコングロマリット企業で、新規事業を手掛ける子会社が資金繰りに関し親会社と方針が合わない場合などに活用されるだろうとの見方も示した。
経済産業省の担当者はスタートアップ創出だけではなく、企業の事業ポートフォリオ組み替えも促進するため、パーシャルスピンオフ税制の適用要件を見直したいと考えていると述べた。税制改正に関する経産省の要望をまとめた資料によると、同税制の適用期限を廃止し、恒久的措置とすることを目指している。
ソニーG株は8日の取引で一時4640円と上場来高値を更新し、年初来の上昇率は40%超と東証株価指数(TOPIX)の17%を大きくアウトパフォームしている。ソニーFG株は流通参考値段の150円を37%上回る初値を付けた後、売り圧力に押され反落したが、8日時点では参考値段を上回っている。
UBPインベストメンツのファンドマネジャー、ズヘール・カーン氏はソニーGの事例が後続企業の増加につながることに期待しつつ、他社の社内で合意が形成されるまでには1-2年はかかるだろうと述べた。
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