トヨタ自動車の「バリューチェーン事業」が急成長している。用品・部品の補給や、金融などアフターサービスでの営業利益は毎年1500億円規模で伸びており、前期(2025年3月期)は約2兆円を稼いだ。今期は新車販売での営業利益を上回る見通しだ。

全世界の顧客が保有するトヨタ車は1.5億台にのぼる。トヨタは生きた資産を活用しようと1月に関連する部門を集約し、バリューチェーン事業部を立ち上げた。

「まだまだポテンシャルがあると考えている」。バリューチェーン事業部の宮本有紀子部長はインタビューでこう話した。保有年数を重ねると、トヨタの販売店以外で定期点検を受ける顧客も増えるため、つながりを維持し続けることが重要だと宮本氏は強調する。

トヨタ車の販売店

自動車業界を取り巻く環境は大きく変化している。購入後もアップデートで機能の追加や改善ができる「SDV(ソフトウエア・ディファインド・ビークル)」の存在感が年々高まっているほか、電気自動車(EV)も少しずつ増えている。こうした新たな技術の登場が、アフターサービスのビジネスモデルを変える可能性もある。

宮本氏も、EVやSDVの登場が「ゲームチェンジャー」になり得ると話す。その一方で不安要素もあるが、チャンスにつなげていきたいと意気込む。

無線で車両に新機能を載せるOTA(オーバー・ジ・エア)も徐々に普及する中、顧客が整備のために販売店を訪れる機会が減るかもしれない。ただトヨタにとっては、より多くの車両をモニタリングできるようになると宮本氏は説明した。

現在はバリューチェーン事業の半分を補給部品が稼ぐが、同社は蓄電・充電など新たなサービスの開拓も可能だとみている。また保有台数が多い先進国市場、少ない新興国市場に、それぞれあわせてアプローチする考えだ。例えば日本では「キントファクトリー」という名称で、購入後の装備品の追加やソフトウエアのアップグレードができるサービスを始めた。

トヨタの24年の世界販売台数は1080万台と、前年からわずかに減ったものの5年連続で販売台数首位を守った。

新車を売れば売るほど保有台数が積み上がり、バリューチェーン事業の商機は増す。ただ売りっぱなしでは顧客をつなぎとめられない。新車販売と顧客との接点の「両方の掛け合わせ」が重要だと、宮本氏は話す。

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