アサヒグループホールディングスで起きたサイバー攻撃によるシステム障害の影響が広がっている。セブン&アイ・ホールディングスでは、「スーパードライ」や「三ツ矢サイダー」などの商品やプライベートブランド(PB)で出荷停止が起きている。一部飲食チェーンでも商品が入荷せず、他社商品で代替する予定だ。

アサヒGHDは3日夕方、原因がランサムウェアによる攻撃だったと明らかにした。調査の結果、情報漏えいの可能性を示す痕跡が確認されたという。ただ漏えいの可能性のあった内容や範囲については調査中で、復旧の時期も明らかにしていない。国内グループ会社での受注・出荷業務ができず、30ある工場のほとんどで生産を停止している。

セブン&アイの広報担当者によると、サワーの「セブンプレミアムクリアクーラー」などが影響を受けているという。ただほとんどのソフトドリンクはセブン-イレブン専用の在庫拠点があり、現時点で大きな影響は出ていない。ただ影響を鑑みて店頭で告知しているという。

アサヒGHDで発生したシステム障害の影響が拡大している(動画)

イオンが展開する通販サイトでも、アサヒビールやアサヒ飲料のギフト商品について販売を一時停止している。ローソンでもアサヒ関連の商品が品薄になる可能性を想定し、代替商品を準備する。

丸源ラーメンを展開する物語コーポレーションは、アサヒビール各商品の在庫がなくなり次第、サントリーなど他社商品に切り替えて提供すると発表した。しゃぶしゃぶレストランの木曽路では、店舗ごとにサントリーやキリンへの切り替えを検討している。広報担当者によると、酒販会社(卸売り)に在庫を回してもらえるように働きかけているという。

都内の酒屋で保管されるビール樽(3日)

日本企業は特に新型コロナウイルス禍以降、デジタルトランスフォーメーションを掲げ、業務システムの効率化などを進めてきた。一方でサイバーセキュリティー関連企業のS&Jの三輪信雄代表取締役は、「昨今の流れからいくと、利便性を高める方にやっぱり勢いがあって、セキュリティーが後追いになっているケースが多い」と指摘する。

ランサムウエアとは、パソコンなどに保存されているデータを不正に暗号化し、そのデータを復元する対価を要求する不正プログラムだ。警察庁の発表によると、2025年上半期の被害報告件数は116件と、22年下期に並び過去最多だった。サイバーセキュリティー調査会社の英コンパリテックによると、世界では3627件で前年同期に比べて47%増えたという。

 

過去には、トヨタ自動車と取引のある部品メーカーの小島プレス工業(愛知県豊田市)がランサムウエアの被害にあい、トヨタの国内全14工場が稼働停止する事態となった。

このまま復旧が進まない場合、アサヒGHDの業績にも影響が及ぶ可能性がある。バーンスタインのアナリスト、ユアン・マクリーシュ氏はリポートで、1日につき10-12月期(第4四半期)の国内売り上げ収益の約0.8%、営業利益の約2.7%が失われる推計を明らかにした。

仮に10月末まで混乱が続き、挽回策が講じられない場合、第4四半期の日本事業の営業利益に対する同証券の見通しについて、83%の下方修正を余儀なくされるという。

(情報を追加して更新します)

--取材協力:古川有希、長谷部結衣.

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