中国の習近平国家主席は米国に対し、台湾独立を巡る立場に関する長年の表現を見直すよう改めて求めている。実現すれば、中国にとって外交面の大きな成果となり得る。

事情に詳しい関係者によると、中国は台湾独立に「反対する」と公式に宣言するようトランプ米政権に要請した。非公開情報だとして匿名を条件に関係者が話した。

バイデン前政権は台湾が正式な独立を目指すことを「支持しない」との立場を取っていたため、反対するとの表現はより踏み込んだものとなる。中国が国際社会で台湾を孤立させようとする取り組みには追い風だ。今回の要請については、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が最初に報じていた。

別の関係者によれば、トランプ政権は中国の要求に関して決定を下していない。米国務省のウェブサイトでは、台湾との関係に関するファクトシートが現在閲覧できない状態となっている。

米台関係を定義する表現は、長年にわたり難しいテーマとなってきた。国務省が2月にウェブサイトから、米国は「台湾独立を支持しない」との文言を突然削除した際には、中国が即座に「誤りを正すよう」要求。それ以前にも、バイデン前政権が2022年5月に同じ文言を除いたことがあったが、中国側の抗議を受けて復活させた経緯がある。

中国外務省の郭嘉昆報道官は29日の定例記者会見で、今回の報道に関する質問に対し、台湾問題に関する同国の立場を改めて表明。「一つの中国の原則」の堅持には、当然ながら台湾独立への反対も含まれると述べた。

台湾外交部(外務省)の蕭光偉報道官は「北京による言説操作を引き続き注視しており、米国やその他のパートナー諸国との円滑で緊密な意思疎通を維持している」と述べた。

国務省には業務時間外にコメントを求めたが、返答がなかった。

実際に表現が変更されれば、米国が台湾に関する立場を貿易交渉の取引材料として使っているのではないかとの懸念が広がる可能性もある。トランプ大統領は、すでに国家安全保障上の懸念から中国に課していたはずの一部のテクノロジー制限を交渉材料としてテーブルに載せたことがある。

ワシントンを拠点とする民主主義防衛財団(FDD)で中国プログラムのシニアディレクターを務めるクレイグ・シングルトン氏は、「今回の動きを巡る重要性は米国が直ちに政策変更を行うということではなく、中国が自国の立場にとって核心と見なす文言について、米国の決意を試している点にある」と指摘する。

シングルトン氏は中国がバイデン前政権に対し、文言の見直しを繰り返し提起したが、米側はこれに応じなかったとした上で、「この問題が再び持ち出されたという事実は、小さな成果を積み重ね、次なる譲歩を引き出すという中国の漸進的な戦略と合致している」と述べた。

原題:Xi Pushes Trump to Oppose Taiwan Independence in Major Shift (1)(抜粋)

--取材協力:Jing Li、Michelle Jamrisko、Colum Murphy.

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