英国の税制変更をきっかけに富裕層の著名な居住者が相次いで国外へ移住し、世界的な富の拠点としてのロンドンの評価が揺らいでいる。

この流れを変えようとしているのが、ロンドン金融街シティーの最高位にあるロードメイヤー(市長)のアラスター・キング氏だ。

キング氏は、世界の富豪の資産を管理するファミリーオフィスの拠点としてのロンドンの地位を強化する取り組みを進めている。

25日には、市長公邸のマンションハウスで会合を主催し、秘匿性の高い運用会社であるファミリーオフィスの代表約100人を招き入れる。ロンドンへのプライベート資本呼び込みと成長促進に向けた構想を示す予定だ。

キング氏(56)はインタビューで、ロンドンの金融セクターについて語り、「今回の会合は、計算されたリスクテークをロンドンに取り戻すという発想に沿ったものだ。ファミリーオフィスの素晴らしい点は、一定のリスクを取れることだ」と語った。

ブルームバーグ・ビリオネア指数による世界の富豪上位500人のうち、少なくとも5分の1はファミリーオフィスを持っている。これらのファミリーオフィスは、合計で4兆ドル(約595兆円)を超える富を管理している。

ロンドンで資産を運用する著名な富豪には、鉄鋼王ラクシュミ・ミタル氏や英国の起業家ジェームズ・ダイソン氏などがいる。

ファミリーオフィスは、富裕な外国人居住者に適用されていたノンドム(英国非永住者)向け優遇税制の廃止による混乱にも一定の耐性を示している。優遇税制は4月に廃止された。

多数の富裕層が英国からミラノ、スイス、アラブ首長国連邦(UAE)といった富の拠点へ移住しているが、ファミリーオフィスがオーナーと共に移転するケースはまれだ。英国には専門サービス分野に豊富な人材が集まっていることが一因とされる。

ロンドン金融街シティー

キング氏は「知人の中には出て行った人もいるが、彼らのファミリーオフィスはここに残っている」と語った。

ファミリーオフィスは、潤沢な資本へのアクセスを背景に、買収案件やプライベートエクイティーのセカンダリー市場、不動産などの分野で存在感を高めている。英国のプライベート資産運用業界において、規模は小さいものの影響力は大きい。

しかしロンドンは、香港やシンガポールといった他の富の拠点との競争にさらされている。両都市はファミリーオフィスの誘致に力を入れている。

 

キング氏は英金融サービス業界の大使として活動していた経歴を通じてファミリーオフィスと関わってきた。

2024年11月にロードメイヤーに就任した同氏は現在、機関投資家に比べて資金運用の柔軟性が高いファミリーオフィスを、英国のプライベート市場成長の新たな原動力と位置付けている。

シティグループの今年の調査によると、ファミリーオフィス顧客346のうち約4分の3が企業への直接投資を検討している。

キング氏は「オルタナティブ投資を本当にうまくこなせるのはファミリーオフィスだ。それが彼らの本業だ」と語った。

原題:London Fights for Family Office Stronghold as Rivals Circle (1)(抜粋)

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