8月の米生産者物価指数(PPI)は、市場予想に反して前月比で低下した。マイナスは4カ月ぶり。米金融当局による利下げの論拠が強まった格好だ。

今回の統計は、トランプ大統領の関税政策によるコスト増にもかかわらず、8月は企業が大幅な値上げを控えたことを示唆している。PPIは7月には大きく上昇していたが、経済の不確実性が消費者の行動に重くのしかかる中、多くの企業は急激な値上げが顧客離れにつながりかねないと警戒している。

食品とエネルギーを除く財の価格は0.3%上昇。サービス価格は0.2%低下した。サービス部門内では、卸売業者と小売業者の利益率が1.7%低下。統計でさかのぼれる2009年以降で最大の低下率に並んだ。利益率は今年これまで月ごとの変動が大きく、貿易政策が価格や需要に与える影響の不確実性を浮き彫りにしている。

サンタンデールUSキャピタル・マーケッツのチーフエコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は「ここ数カ月、小売業者が関税コストを吸収してきているように見受けられる」とリポートで指摘。「企業はこれまで、可能な限り価格を据え置いてきたと一貫して説明してきたが、今後は選択的に値上げを始めざるを得ないだろう」と記した。

企業が関税コストをどの程度消費者に転嫁するかは、年内の金利の道筋を左右する重要な要素となる。米連邦準備制度理事会(FRB)当局者はおおむね、輸入関税が年内残りの期間を通じてインフレを押し上げると予想しているが、それが一時的な調整にとどまるのか、より持続的な影響となるのかについては判断が分かれている。

米労働統計局によると、サービス価格低下の4分の3は、機械と自動車の卸売りの利益率が3.9%低下したことに起因する。一方、食品とエネルギーを除く最終消費財は2月以来の高い伸びを記録。たばこ製品の大幅な値上がりも一因で、労働統計局はこれを、財価格を押し上げた「主要因」としている。

11日に発表される消費者物価指数(CPI)は、関税が8月にどの程度、米世帯に波及したかを示す手掛かりとなる。市場では、食品とエネルギーを除くコアCPIが前月比で再び高い伸びになると予想されている。

エコノミストがPPIを注視するのは、カテゴリーの一部がFRBが重視するインフレ指標である個人消費支出(PCE)価格指数の算出に使用されるためだ。PCEに関連する項目は、8月は強弱まちまち。ポートフォリオ運用サービスや航空運賃は着実なペースでの上昇が続いた一方、医療サービス関連の複数の指標はより小幅な伸びにとどまった。

食品、エネルギー、貿易サービスを除いた変動の少ないPPIは前月比0.3%上昇。生産過程における比較的早い段階での物価を反映する中間財の価格は0.4%上昇した。

統計の詳細は表をご覧ください。

原題:US Producer Prices Unexpectedly Drop, First Decline Since April(抜粋)

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--取材協力:Chris Middleton、Mark Niquette、Reade Pickert.

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