世界的な債券市場の混乱と国内の政治や財政への不安が再燃した中で、4日の30年国債入札は厳しい結果となる可能性がある。

2日の10年債入札は堅調な需要を集めたが、償還までの期間が10年を超える国債(超長期債)は財政拡大のリスクや根強いインフレ圧力への懸念が色濃く反映される。米国と欧州の超長期国債利回りの上昇もあり、日本の新発30年国債利回りは3日に3.285%と1999年の発行開始以降の最高水準を更新した。

生命保険会社や年金基金などの機関投資家が購入を控える中、主要国市場では財政不安が再燃し、超長期債への売り圧力が増している。30年債利回りは今週、米国で一時5%の大台に近づき、英国では98年以来、フランスで2009年以来の高水準を付けた。

7月の参院選大敗を巡り、自民党の森山裕幹事長が辞意を表明するなど政治流動化のリスクも市場の不安をあおる。世論調査での支持率改善を背景に石破茂首相は当面続投する考えだが、党内で「石破降ろし」の動きはやんでいない。麻生太郎最高顧問は臨時総裁選の実施を求める意向だ。

政権が代われば、有権者の支持を得ようと国債増発を伴う財政支出の拡大につながる恐れがある。インベスコのアジア太平洋債券責任者であるフレディ・ウォン氏(香港在勤)は、超長期金利の上昇が「債務返済コストを押し上げて予算を圧迫し、財政の柔軟性を低下させる」と指摘。政治の不確実性の高まりで、「財政規律と政策継続性を維持する能力が疑問視されている」と話す。

日本銀行の氷見野良三副総裁が行った2日の講演は、利回り曲線のスティープ(傾斜)化に拍車をかけた。氷見野氏は経済・物価に上下双方向のリスクがある中、利上げは「先走り過ぎにも後手にも回らないようにしなければいけない」と発言。一部投資家が期待した早期利上げの示唆はなく、金利スワップ市場では5割程度だった10月までの利上げ織り込みが4割程度に低下した。

植田和男日銀総裁は3日、石破首相と官邸で会談した後、経済・物価見通しが実現していけば、利上げを継続する方針を改めて表明。予断を持たずに判断するとの見解を示した。

関係者によると、財務省は8月下旬に国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)に対し、流動性供給入札の超長期債の発行削減に関するアンケートを送付した。同省はボラティリティーの沈静化を図るため、7月から超長期債の供給を削減しているが、その後も金利は上昇基調をたどっており、流動性供給入札の減額が足元で強まる投資家の不安を和らげるかどうかは不透明だ。

オリックス生命保険資産運用部の嶋村哲マネージング・ディレクターは、財務省が需給不安を感じていることはサポート要因だが、「超長期債の需給は相応の水準訂正なくして回復しない可能性が高い」と分析。政治リスクも「投資家が購入に強く踏み切れない材料」だと言う。

自民党は8日に総裁選前倒しの是非を判断する。ソシエテ・ジェネラルのストラテジスト、スティーブン・スプラット氏らは3日のリポートで、総裁選の判断は「金利見通しにとって重要」で、政治不安は「日銀利上げのリスクを低下させ、財政懸念を市場の焦点にさせる」と指摘。これは年限の短いゾーンの利回りが低下し、長いゾーンが上昇するツイストスティープ化を意味するとした。

30年国債入札の結果は午後0時35分に発表される。トレーダーらは投資家需要の強弱を反映する応札倍率に注目している。前回の入札の応札倍率は3.43倍で過去12カ月平均を上回った。

--取材協力:山中英典.

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