習近平国家主席、プーチン大統領、そして、金正恩総書記。中国でおこなわれた軍事パレードで初めて3人が一堂に会しました。その狙いはどこにあるのでしょうか?

抗日戦争勝利80年 軍事パレード開催の理由

高柳光希キャスター:
中国・北京で約70分間にわたって行われた軍事パレード。なぜ9月3日にパレードが行われたのでしょうか。

実は国によって、いつ戦争が終わったのかという認識が異なります。日本にとって第2次世界大戦が終結した「終戦の日」は8月15日です。しかし中国では、日本が降伏文書に署名をした1945年の9月2日の翌日9月3日が、終戦の日にあたる「抗日戦争勝利記念日」となります。

その記念日に行われた軍事パレード、中国政府の狙いはどういったところにあるのでしょうか。

JNN北京支局 立山芽以子 支局長:
中国共産党にとって「日本との戦争に勝った」というのは、「いま自分たちがどうして中国を統治しているのか」という正当性の原点です。

日本は選挙で政権が決まりますが、中国は選挙がありません。そのため「なぜ共産党が中国を統治してるのか」という疑問が出てきてしまうため、「日本との戦争に勝利したのは中国共産党である」という建国原点の物語を強調することで、国民を納得させる必要があります。

中国では2025年、その機運を盛り上げるため、9月3日に行われた軍事パレードだけではなく、年間を通じて抗日戦争にまつわる映画を公開するなど、様々なアピールをしています。

7月には、南京事件(南京大虐殺)を題材にした「南京写真館」という映画が公開され、3週間で興行収入が700億円超となる異例の大ヒットとなっています。

私も観に行きましたが、印象に残ったのは「歴史を忘れずに、強くならなくてはいけない」という最後のメッセージです。これは、「強くならないと、また同じように外国に侵略されてしまう」というメッセージです。

これは、習近平指導部が打ち出している「強国」というメッセージと重なります。「中国共産党だから国を強くすることができる」ということを強調し、求心力を保つ。軍事パレードも「強い国」というメッセージを打ち出す一環だったのではないかと思います。

井上貴博キャスター:
中国共産党としては国を、経済を強くし「我々しかできないんだ」ということを発信したいということだと思いますが、蓋を開けると経済は低迷していて、思うようにいっていません。中国国民の「中国共産党では駄目ではないか」という声は、まだ抑え続けられているのでしょうか。

JNN北京支局 立山芽以子 支局長:
経済は良くありませんが、不満が高まり統治ができないというほどではありません。しかし中国政府は、3日の軍事パレードにいくらお金を使ったのか公表しておらず、「パレードにお金を使う余裕なんかあるのか」「経済を何とかしてくれ」という声が、市民の中にあるのもまた事実だと思います。

肉乃小路ニクヨさん:
まず、習近平国家主席、プーチン大統領、金正恩総書記の3人が並んで映っていた。影響力のある3人が揃って映っている場面に驚きました。

そして、実際に降伏文書に調印したのは、今の台湾である中華民国だったと思いますが、それを「共産党のおかげで戦争が終わった」としています。このように、歴史は勝者により書き換えられていく可能性があるということが非常に勉強になりました。

世の中で私たちが学んできたことも、「もしかしたらそういったこともあるのかな」ということを思いながら、歴史を振り返るべきなのではないかと思いました。