(ブルームバーグ):トランプ米政権による不法移民取り締まり・摘発の実行を担う移民・税関捜査局(ICE)は、携帯電話をハッキングし、個人のメッセージを読み取るスパイウエアの利用が今後可能になる見通しだ。バイデン前政権下の停止命令が撤回された。
米政府のウェブサイトに掲載された調達記録によれば、トランプ政権は8月30日、テルアビブに本社を置くParagon(パラゴン)からスパイウエアを調達するICEの契約に関し、停止命令を解除した。
ICEは昨年9月、この200万ドル(現在の為替レートで約2億9700万円)相当の契約に調印し、その後停止命令が出された。パラゴンのスパイウエアを巡っては、欧州で活動家やジャーナリストの監視に用いられた疑惑が存在する。
トランプ大統領の「米史上最大の強制送還作戦」実行に向け、ICEは全国規模で不法移民を取り締まる強力な監視ツールを手にする。
契約更新の詳細については、ニュースレター「オール・ソース・インテリジェンス」が先に伝えていた。
ICEとパラゴンの担当者にコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。パラゴン米国部門のジョン・フレミング会長はブルームバーグ・ニュースに対し、同社が「全ての米国法と規制の順守に深くコミットしている」と先に述べた。
トロント大学に拠点を置く監視団体シチズン・ラボの上級研究員ジョン・スコットレイルトン氏は、米政府機関がパラゴンのスパイウエアを採用すれば、米国市民の自由にリスクをもたらしかねないと警告する。
「戦術的な価値を認める向きもあるが、これらのツールは自由と個人の人権保護を基盤とする民主主義国ではなく、専制国家のために考案された。抑圧のための道具を使えば、憲法上のロシアンルーレット(危険な賭け)になる」とスコットレイルトン氏は指摘した。
パラゴンの技術を用いれば、携帯端末に不正に侵入し、暗号化で保護された通信アプリ「シグナル」や「ワッツアップ」のメッセージをひそかに記録することができる。
メタ・プラットフォームズ傘下のワッツアップは今年1月、欧州で活動家や記者にパラゴンの技術が使われたことを確認したと発表。イタリアでは二つの報道機関がローマの検察に刑事告発し、背後関係の捜査を求めた。イスラエル紙ハーレツの報道によると、スキャンダルの影響で、パラゴンとイタリアの情報機関との契約が解消された。
シチズン・ラボのサイバーセキュリティー研究者が今年3月に公表したリポートによれば、カナダの法執行機関も同じスパイウエアを使いメッセージを傍受した疑いがある。
原題:ICE to Gain Access to Spyware After Biden Order Dropped (1)(抜粋)
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