(ブルームバーグ):全米各地で電気自動車(EV)用の公共急速充電器が次々と設置され、ガソリン車に代わるクリーンな移動手段を求めるドライバーに利用されている。だが意外なリスクがある。充電ステーションが大気汚染を引き起こしているのだ。
EVは内燃機関車に比べれば大気汚染への寄与ははるかに小さい。しかし最近の研究では、急速充電ステーションが「見過ごされてきた大気汚染源」だとされている。
米エネルギー省のデータによると、米国内の高速充電ステーションは4-6月(第2四半期)に703カ所増加し、計1万1400カ所に達した。充電事業者は年末までに数百カ所の増設を計画しており、このインフラが定着する前に健康リスクに対処することが重要になっている。
研究リポートの共著者でカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)フィールディング公衆衛生大学院のポスドク(博士研究員)、ユアン・ヤオ氏は、この問題は「解決できる」とみており、「クリーンなEV普及を確実なものにしたい」と語る。
問題の原因は、直流(DC)急速充電器の電源キャビネットで使われる冷却ファンにある可能性が高い。充電器を冷やす役割を果たす一方で、タイヤやブレーキの摩耗粉、ほこりなどを巻き上げ、空気中に拡散させてしまう思わぬ副作用があると研究リポートは指摘する。
研究チームはカリフォルニア州ロサンゼルス郡の直流急速充電ステーション50カ所で大気質を測定した。その多くは米テスラの急速充電器「スーパーチャージャー」の拠点だった。同社はコメントの要請に応じなかった。
調査対象となった充電拠点の大気中に含まれる微小粒子状物質(PM2.5)の平均濃度は1立方メートル当たり15.2マイクログラムだった。これはガソリンスタンドで測定された数値よりわずかに高く、公園など他の都市部の地点に比べると明らかに高い。充電拠点のほぼ半数で、1日当たりのPM2.5濃度が世界保健機関(WHO)の大気質ガイドラインを超えていた。

リポートの著者らによれば、EV充電事業者は充電キャビネットにろ過装置を組み込むことで汚染を抑制できるほか、学校や住宅地などの付近での設置を避けるといった対応も可能だという。
一部の企業は、既にPM2.5によるリスクの低減に向けた措置を講じたと明らかにしている。
「EV充電、特に急速充電ステーションを拡大する際には、充電設備そのものからの排出の可能性にも注意を払うべきだ」とヤオ氏は語った。
原題:Electric Vehicle Chargers Are Surprising Source of Air Pollution(抜粋)
--取材協力:Kyle Stock.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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