子どもが餓死するなど、人道危機が続くパレスチナ自治区ガザ。配給所の元警備担当の男性がJNNの取材に応じ、イスラエル軍らがガザの人々を銃殺していたと証言しました。男性が私たちに訴えたかったこととは。

有刺鉄線に囲まれた狭い道に集まる大勢の人。その裏で何度も乾いた銃声が響いています。これは私たちが独自に入手したガザの映像です。さらに別の映像では…

「いまの誰かに命中したと思うぞ!」
「よっしゃ!やったぜ、お前ら!」

3月にイスラエルが支援物資の搬入を大幅に制限して以降、餓死する子どもが相次ぐなど、人道危機に見舞われているガザ。

現在、ガザ内での食料配給はイスラエルとアメリカが主導する「GHF=ガザ人道財団」が担っています。

しかし、GHFの配給所付近ではイスラエル兵や警備担当の元アメリカ兵らによるガザ住民への攻撃が相次いで報告されていて、国連は859人が殺害されたと発表。イスラエルやGHF側は「でっちあげだ」などと、これを全面的に否定しています。

支援の現場で何が起きているのか。私たちは今回、GHFの配給所で警備を担っていた男性に接触することができました。

アンソニー・アギラーさん。3月までアメリカ陸軍屈指の精鋭部隊「グリーンベレー」に所属していて、5月にガザへと入りました。

元GHF警備担当 アギラーさん
「誰もが想像する以上に状況が深刻であることを世界に向けて証言するためにここに来ました。これはこれまでの人生・軍人生活で見てきた中で、最も悲惨で非人道的な光景です」

配給所では住民を追い返すために発砲が繰り返されていたと証言します。

JNN中東支局長 増尾聡
「率直に聞きます。イスラエル兵や元米兵が市民に向けて発砲する様子を見ましたか?」
元GHF警備担当 アギラーさん
「何度も見ました。毎日です。イスラエル軍は彼らを移動させるための銃撃を“コミュニケーション”と呼んでいました」

アギラーさんは、アミールという10歳の少年が忘れられないと話します。

元GHF警備担当 アギラーさん
「彼は10歳でした。両親も兄弟も一緒ではなく、たった一人で来ていました」

地面に落ちていた物資を手にしたアミールくんは、アギラーさんに近寄ると…

元GHF警備担当 アギラーさん
「彼は手を伸ばし、私の仲間の手を、それから私の手を握りました。そして私たちの手にキスをして、額に当てました。彼の手はただの骨と皮だけでした。彼は何かを求めるわけでも、不満を言うわけでもありませんでした。そして私を見て英語でこう言ったのです、『ありがとう』と」

アミールくんが群衆の中に戻った後、イスラエル軍は群衆の方向に発砲。アミール君も銃弾に倒れたといいます。

元GHF警備担当 アギラーさん
「アミールは地面に倒れ込み、動かなくなっていました。現場ではそれが“普通”のことでした」

GHFは、アギラーさんの証言について「虚偽を広める行為だ」と声明で反論。私たちはGHFに取材を申し込みましたが、回答はありませんでした。

アギラーさんは、このままイスラエルとGHF主体の人道支援が続けば、犠牲者がさらに増えると強い危機感を示しています。

元GHF警備担当 アギラーさん
「誰も『知らなかった』と言い訳することはできません。私たちは『知っている』のですから。今この時に行動を起こして防がなければ、その命の責任は、ただ傍観しているだけだった私たち全員が負うことになるのです」