トランプ米大統領が打ち出した相互関税は、米国の経済成長を鈍らせ、物価を押し上げると同時に、世界経済に打撃を与える可能性が高い。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)が分析した。

1日に発表された関税は10%から最大41%に及び、第2次世界大戦以降で最も高い水準となる。BEのチーフ貿易エコノミスト、マエバ・クザン氏の計算によれば、これによって米国の平均関税率は2024年の2.3%から15.2%に上昇する。

こうした関税引き上げは、今後2-3年で米国の実質国内総生産(GDP)を1.8%押し下げ、コア物価を1.1%押し上げる可能性がある。また、世界的には、輸入関税の上昇が貿易相手国の需要を冷やすとみられる。

企業がコスト上昇分のどの程度を利益率の圧縮で吸収し、どれだけを消費者に転嫁するかによって、影響の度合いは変動する可能性がある。

BEの試算は、発表された関税がそのまま実施されることと、欧州連合(EU)、日本、韓国との自動車関税に関する合意が維持されることを前提としている。中国は依然としてホワイトハウスと交渉中であるため、今回の試算には含まれていない。

米政府が現在検討している分野別の追加関税も影響を左右する要因だ。

クザン氏は1日のリポートで「今回の関税措置は、世界のGDPに大きな打撃を与える。米国の多くの貿易相手国にとって、関税引き上げは需要の下振れリスクをもたらし、経済活動とインフレの双方に重くのしかかる」と論じている。

BEの分析によれば、最大の打撃を受けるのは中国とスイスとみられる。中国は合成麻薬フェンタニル関連の20%を含め多数の品目が関税の対象となっている。スイスに対する関税率は39%と、4月2日発表された水準より高くなった。

ただ、新たな関税措置の発効までに7日間の猶予期間が設けられており、関係国が自国の関税率をさらに引き下げる交渉を行う余地は残されている。

原題:Highest US Tariffs Since WWII Set to Cut Growth, Boost Inflation(抜粋)

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