(ブルームバーグ):米アップルで人工知能(AI)開発を担っていた研究者がまた一人、米メタ・プラットフォームズに転職した。アップルからの人材流出はここ1カ月間で4人目となり、iPhoneを手がける同社のAI戦略に新たな打撃となる。
事情に詳しい関係者によると、マルチモーダルAIの中核を担っていたボーウェン・チャン氏が25日にアップルを退社し、メタが最近立ち上げたスーパーインテリジェンス(超知能)チームに加わる。チャン氏は、アップルのAIプラットフォームの中核技術を構築した基盤モデルチーム「アップル・ファンデーション・モデル」(AFM)に所属していた。
ブルームバーグの以前の報道によれば、AFMのリーダーだったルオミン・パン氏は、2億ドル(約300億円)以上の報酬パッケージでメタに引き抜かれた。トム・ガンター氏とマーク・リー氏の2人も最近メタに移籍した。AFMはカリフォルニア州クパチーノとニューヨークに拠点を置き、数十人のエンジニアや研究者が所属する。
関係者によると、アップルはメタなどからの引き抜きに対抗するため、AFMのスタッフに対し退職の意思の有無にかかわらず給与を多少引き上げているが、競合他社の報酬水準には及ばないという。アップルとメタの広報担当者はいずれもコメントを控えた。
29日の米株式市場では、アップル株が一時1.5%安の210.82ドルまで下落した。
アップルのAIモデル開発チームは、幹部らの離脱で動揺が広がっている。とりわけパン氏は、研究方針や開発ロードマップの策定で中心的な役割を担っていた人物だったことから、AFM内では今後の見通しが不透明だとの声が複数上がっている。別の関係者によれば、他のエンジニアらも転職活動を進めている。

AFMはアップルのAI戦略全体において重要な役割を果たしており、同チームの取り組みは、昨年発表された「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」の基盤を担う。だが同社は現在、外部モデルの活用を検討しており、関係者によると、内製モデルがAI分野で競合に追いつく上で足かせになっていると一部の幹部は考えている。技術の外注化を巡る先行き不透明感が、社内の士気を低下させ、人材流出を加速させている。
原題:Apple Loses Another AI Researcher to Meta in Latest Upheaval (1)(抜粋)
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