(ブルームバーグ):トランプ米大統領が先週署名した米国の画期的な暗号資産関連法案の成立を受け、世界最大のステーブルコイン発行体であるテザー・ホールディングスは、米国市場での事業再開に向けた計画を進めている。
テザーのパオロ・アルドイノ最高経営責任者(CEO)は23日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで「米国内戦略の構築は順調に進んでいる」と述べ、「米機関投資家向け市場に焦点を当てる。決済だけでなく、銀行間の決済や取引にも適した効率的なステーブルコインを提供する」と話した。
ステーブルコインは、通常はドルなどの法定通貨と連動し、価格が安定するよう設計されたデジタル資産。これまでは企業間決済よりも、主に暗号資産市場での取引に用いられてきた。テザーが発行する「USDT」は、取引量ベースで世界で最も取引されている。
今回の「ジーニアス(GENIUS)法」の成立により、ステーブルコインの利用が国際送金や決済の分野に広がる可能性があり、銀行やカード会社、テクノロジー企業などによるステーブルコイン発行の道も開かれるとみられる。

テザーのUSDTは、広く普及した初のステーブルコインとして知られるが、監査を怠るなど透明性を巡る批判を長年受けてきた。アルドイノ氏によれば、同社は過去1カ月ほどの間に監査法人との協議を行ったという。
現在エルサルバドルに本社を置くテザーは2021年に、虚偽・誤解を招く主張を行ったとされる問題を決着するためニューヨーク州と米商品先物取引委員会(CFTC)に対して約6000万ドル(約88億円)を支払っており、その後、ニューヨーク州での営業を禁止されていた。
テザーの米国再参入は、上場したばかりのサークル・インターネット・グループにとって脅威となる可能性がある。サークルが発行する「USDC」は米国内でシェアを握っており、6月初旬の上場以来、同社株は500%強上昇している。
テザーが発行するUSDTの流通残高は現在約1620億ドルで、年初から18%増加している。これに対し、サークルのUSDCは約647億ドル。
アルドイノ氏は、テザーに上場の予定はないとし、「基本的に上場企業になることには関心がない」と発言。米国進出を計画する一方で、引き続き新興市場に注力していく方針だと述べた。
原題:Tether CEO Says Stablecoin Issuer Is Making Plans to Enter US(抜粋)
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