(ブルームバーグ):日本銀行は、参院選での与党敗北を受けても、現在の物価目標実現シナリオと利上げ継続路線を変更する必要性は大きくないとみている。今後の財政政策による経済・物価への影響を注視する。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。
自民・公明の連立与党は、衆院に続いて参院でも過半数を割り込んだ。石破茂首相は21日の記者会見で、日本は「政治には一刻の停滞も許されない」と続投を正式表明した。今後の政治情勢は不透明だが、関係者によると、現段階で国内の経済・物価見通しが大きな変更を迫られるような状況にはないと日銀は判断している。

市場では参院選は想定内の結果と受け止められた。石破首相の続投表明もあり、混乱は生じていない。日本が祝日だった翌21日の円相場は円高に振れ、22日は1ドル=147円台で推移。東京株式市場の日経平均株価は反発して始まった後、下げに転じた。市場の関心は日米関税協議と石破政権の行方に移っている。
日銀は30、31日の金融政策決定会合で、新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)について議論する。関係者によると、2027年度までの見通し期間の後半に、基調的な物価上昇率が2%程度で推移するとのシナリオは維持できると日銀はみている。経済・物価が日銀の見通しに沿った動きとなれば、その改善に応じて利上げを続け、金融緩和の度合いを調整していく方針も変わらない公算が大きい。
参院選の結果は、現時点で日銀の経済・物価見通しや政策運営スタンスの大きな変更につながるものではないが、政府による財政措置の大幅な拡大が一段の物価上昇を招く可能性を警戒する声も一部にあると関係者は指摘した。
トランプ米政権の関税政策の展開とその影響を受けた海外の経済・物価動向が引き続き最大のリスクと日銀はみており、利上げを検討する際には慎重に見極めるという。トランプ氏は日本からの輸入品に対し25%の上乗せ関税を8月1日に発動する考えを示している。先行き不確実性が大きい情勢が続く中、今回会合で日銀は政策金利を0.5%程度に据え置く可能性が高いと関係者はみている。
会合後に公表する最新の経済・物価見通しは、コメを中心とした食料品価格の上昇を反映し、25年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)見通しの上方修正を検討する見込みだ。5月1日に公表した前回の展望リポートでは、同年度のコアCPI見通しを前年比2.2%上昇とした。
関係者によると、経済見通しは、日米関税交渉の長期化などで関税による下押し圧力の顕在化が後ずれする形となっているが、前回の展望リポートから大きな変化はない見込みだ。仮に日本に25%の関税が適用されても、潜在成長率を明確に下回るような大きなマイナスの影響にはならないと日銀はみているという。
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