(ブルームバーグ):複数の大手資産運用会社が、リスク資産への投資姿勢を一段と強めている。貿易問題や地政学的な緊張が続く中でも、相場上昇を追う考えだ。
インベスコ、フィデリティ・インターナショナル、JPモルガン・アセット・マネジメントなどは、米国やアジアのハイテク株や新興国資産に対する強気のポジションを強化している。トランプ米大統領が経済秩序を再び揺るがすような言動を見せているものの、土壇場で踏みとどまるとの見方が背景にある。
バリュエーションが高水準にありマクロ経済の逆風も続く中、トランプ氏への期待がリスク資産への投資を正当化する材料となっている。今や、傍観することこそが最もリスクの高い選択肢であるかのように見え始めている。

インベスコのマルチアセットポートフォリオマネジャー、ソン・チャンファン氏(香港在勤)は「市場が調整したり、米国の金利が上昇したりすれば、トランプ氏が4月と同様に一歩引くだろうという『トランプ・プット』の考え方が、市場に広く浸透している」と説明。「不確実性を乗り越える上で、運用会社の姿勢がリスク選好型に傾いていく可能性が高い」と述べた。
運用者らの見方は単なる楽観ではなく、第2次トランプ政権がもたらす不安定が最終的に経済的な現実路線に収束するという計算に基づくものだ。グローバルなファンドマネジャーにとっては、国際貿易やサプライチェーンの先行きが引き続き堅調であることを意味し、インドネシアの現地通貨建て国債や韓国の半導体メーカー、米国の成長株など幅広い資産を支える原動力となっている。
ソン氏によると、インベスコは4-6月(第2四半期)の企業決算発表を前に米国株への投資配分を引き上げた。決算内容が株価をさらに押し上げると見込んでいるためだという。
同社は米国株にオーバーウエートの姿勢を取っているものの、より有望な市場は他にあるとみている。「世界全体の動きを見る限り、欧州や新興国といった米国外の市場により強気な姿勢を取る可能性が高い」とソン氏は話した。

フィデリティ・インターナショナルは、ハイテク企業の集積度が高い台湾株を選好しているほか、割安感のある韓国株にも注目している。
マルチアセットファンドマネジャーのイアン・サムソン氏(シンガポール在勤)は「台湾は、テクノロジーサイクルの上昇局面に乗る上で、最も割安な投資手段の一つだと考えており、オーバーウエートの姿勢を取る十分な理由がある」と語った。
一方で、フィデリティは全てのリスク資産に対して強気なわけではない。サムソン氏によれば、同社のクロスアセットポートフォリオは米国の投資適格債およびハイイールド債については弱気に転じている。米国債との利回り格差が小さいことが理由で、ヘッジ手段として金(ゴールド)を購入しているという。
JPモルガン・アセットは、人工知能(AI)に対する市場の期待を背景に、米国の中型ハイテク株にさらなる上昇余地があると見ている。
投資ストラテジストのケリー・クレイグ氏(メルボルン在勤)は「AI需要の追い風が、米国の中型テクノロジー株を引き続き下支えするだろう」と述べ、「米国および世界全体におけるAIの導入は、まだ成長の余地を残している」と指摘した。
米国株に対する強気は3社にとどまらない。ゴールドマン・サックス・グループは今月、S&P500種株価指数の目標値を引き上げ、HSBCホールディングスもマルチアセットポートフォリオにおける米国株の比率引き上げを推奨している。
原題:Fund Giants Put Faith in ‘Trump Put’ to Keep Stock Rally Rolling(抜粋)
--取材協力:Sunil Jagtiani、Sid Verma.
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