(ブルームバーグ):参院選後の日本市場では、債券相場が中長期的に下落(金利は上昇)に向かう公算が大きい。自民、公明の連立与党が参院で過半数を割り込み、消費税減税を掲げる野党の影響力が強まる中、財政拡張への懸念が再燃する可能性がある。ただ、22日の相場は、前日の海外債券市場の上昇や選挙前までの国内金利上昇の反動もあり、債券先物は上昇しいている。
NHKの開票速報によると、与党は参院全体の過半数維持に必要な50議席に届かなかった一方、国民民主党と参政党は議席を2桁台に増やした。石破茂政権の求心力低下で日米関税交渉が頓挫するリスクも警戒され、株式や円相場も波乱の展開に見舞われかねない。石破首相(自民党総裁)は21日午後の記者会見で、続投する意向を正式表明した。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「財政拡大への懸念は市場でくすぶり、参院選の結果を受けて日本国債は売られる展開になる」と予想。ただし、財政規律に厳しい石破氏の続投は安心材料である上、既に選挙前に売り込まれていたことや参院選の結果が想定範囲内だったため、激しくは売り込まれないともみている。年末に向けて利回りは10年債で1.8%、30年債金利は3.5%程度に向けて上昇していくリスクがある。
野村証券の岩下真理エグゼクティブ金利ストラテジストは、財政拡大への懸念と一定の売り圧力は続く可能性があるものの、現時点で積極的に売りに出る材料は不足しており、様子見の姿勢が強まると予想。参院選では事前予想以上に与党が健闘し、石破氏の続投が短期的に債券市場にとって支えとなる可能性があるとも語った。

豪ペッパーストーングループのストラテジスト、ディリン・ウー氏は「財政・経済政策の不透明感は、少なくとも短期的にはグローバル投資家にとっての日本資産の魅力を損なう可能性が高い」と分析。政治的な不確実性は「日米通商交渉を複雑化させ、市場心理に悪影響を与える可能性がある」と言う。
加藤勝信財務相は22日、消費税減税は政府としては適切ではないと発言した。同日の日本市場では、円が対ドルで一時147円台後半まで下落した。株式市場では、参院選の結果が想定の範囲内だったとの見方から小幅に上昇している。
ペッパーストーンのウー氏は、特に電力や建設、銀行など政策の影響を受けやすいセクターが売り圧力にさらされると予測。一方で、ヘルスケアなどディフェンシブセクターは底堅く推移する可能性があるとの見方を示す。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャーは、金融緩和に軸足を置く国民民主党や参政党の躍進で短期金利の上昇は抑制されるとし、円は売られやすいと予想する。財政拡大の可能性から超長期金利は上昇しやすいものの、ネガティブな金利上昇と受け止められ、円安要因になりやすいと話した。
(第6段落に加藤財務相のコメントを追加、円相場と株式先物の水準を更新します)
--取材協力:アリス・フレンチ、間一生.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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