(ブルームバーグ):米フィラデルフィアに住むアレックス・ジョージさんが「TikTok(ティックトック)」に投稿した手作り菓子の動画が話題を集めている。ピスタチオを使った黄緑色のスイーツだ。
シリアル、溶かしたマシュマロに混ぜ込まれたのが、たっぷり砂糖が入ったピスタチオクリーム。刻んだピスタチオと中東の伝統的な砂糖菓子「ハルヴァ」が加えられている。
独学で菓子作りを学んだジョージさんは、43万7500人のフォロワーを持つ。2月に投稿して以来、この動画は5万3000回超再生された。
「ピスタチオは色がきれいなので、美しくなった」とジョージさん。今はすべてが見た目で評価される時代で「味を考える前に、目で料理を判断していることもあると思う」と話す。
そうした視覚的な魅力も手伝い、ピスタチオが今、注目を集めている。
アラブ首長国連邦(UAE)のチョコレート店「フィックス・デザート・ショコラティエ」がピスタチオクリームを詰め込んだ「ドバイチョコレート」を世に出すと大流行となり、世界中で類似商品が生まれた。
1年半たち、ピスタチオはSNSやレストランのメニューで定番となり、キャンディーだけでなくペストリーやエスプレッソ系ドリンク、パスタなどにも使われている。
口コミサイトのイェルプのデータが、過去1年間で消費者の関心が急増していることを裏付ける。2024年6月から25年5月までの期間の「ピスタチオ」の検索数は、前年同期比で2倍超に増えた。「ピスタチオ・ラテ」だと128%増、「ピスタチオ・チョコレート」は8942%増だ。
広告宣伝や海外市場開拓に長年取り組んできた米国のピスタチオ生産者にとっては今が好機となる。カリフォルニア州に集まる業界各社の間では、今後の収穫に見合う世界的な需要拡大への期待が高まっている。
ピスタチオの生産には豊作と不作が交互に訪れる周期性があり、23-24年のシーズンは過去最高の14億9000万ポンドを記録した。このタイミングで「ドバイチョコレート」が登場。勢いを後押しした。
9月にスタートする25-26年のシーズンについて、米農務省はこうした記録を上回ると予測している。

8月に終わる24-25年のシーズンについては、11億ポンドの収穫が見込まれている。供給は比較的少ない一方、ネット上でピスタチオへの関心は高く、ビジネスへの追い風となっている。
販売会社のメリディアン・グロワーズのマネジングパートナー、ジム・ザイオン氏は、製菓業者に人気のピスタチオのかけらは、足元で1ポンド当たり10.50ドル(約1500円)と1年前よりも17%高く、農家の利益率に貢献していると説明。ピスタチオは旬のナッツで、「誰もが関わりたがっている」と話す。

需要維持が重要
一方で、この秋見込まれる豊作で価格に下押し圧力がかかる可能性があり、高い需要を維持することが特に重要だと、食品・農業セクターに融資するラボバンクのシニアアナリスト、デービッド・マガーニャ氏は指摘している。
ピスタチオ業界は、供給先確保のために多額を投資しているが、トランプ米大統領が仕掛ける貿易戦争が輸出市場に影を落としている。
ナッツの品質を規制する西海岸の団体「アドミストレーティブ・コミッティー・フォー・ピスタチオ」によれば、ここ数年、米国産ピスタチオの60-70%が海外で販売されており、23-24年のシーズンはそのうちの3分の1余りが中国向けだった。
ナッツなどを生産するワンダフル・ピスタチオズは、国内需要の維持に向け5月に数百万ドル規模のマーケティングキャンペーンを開始した。800余りの生産者を代表する非営利団体アメリカン・ピスタチオ・グロワーズも24年度、マーケティングや販促に約1050万ドルを支出。昨年の990万ドルから増額となった。
ザイオン氏によれば、ナッツの加工も行うメリディアン・グロワーズは23年、カリフォルニア州ファイアボーの工場の処理能力を倍増させるとともに、焙煎(ばいせん)や殺菌処理も自社で行えるようにした。米国内向けにそのまま食べられる商品を販売できるようになったという。
(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
原題:Dubai Chocolate Drives Up Margins for Pistachio Growers(抜粋)
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