(ブルームバーグ):韓国の李在明大統領は、米国との貿易交渉について、来週までに合意できるかどうかは依然として不透明だとの認識を示した。トランプ米政権による各国・地域に対する上乗せ関税の一時停止措置は9日が期限となっている。
李大統領は3日、米韓の交渉について「われわれは最善を尽くしている。双方は相手が何を求めているのかまだ明確に把握できていない」と述べ、これまでの交渉は容易ではなかったとも付け加えた。青瓦台迎賓会で行われた就任後初の記者会見で語った。
米国の主要な同盟国である韓国は、自動車や半導体、バッテリーの主要輸出国。国内総生産(GDP)に占める輸出の割合が4割以上を占めるため、米国の関税措置の影響を特に受けやすく、企業や経済は打撃を受ける。
韓国政府当局者は、9日までに米韓が合意に至る可能性は低いことを認めている。仮に合意も期限延長も実現できなければ、韓国から米国への輸出品に対する関税は現在の10%から25%に引き上げられる。トランプ大統領は交渉期限の延長は予定していないと発言し、各国への圧力を強めている。
韓国経済は1-3月(第1四半期)にマイナス成長に転じた。韓国銀行(中央銀行)は関税を巡る不透明さを理由に25年の経済成長率の見通しを1.5%から0.8%へ引き下げている。24年後半以降、4回にわたって金利を引き下げ、直近の5月の利下げで政策金利は2.5%に低下した。
李大統領はさらに、経済の立て直しと国民生活の向上に取り組む考えを示し、就任後にまず緊急経済対策本部を立ち上げたことに触れた。
ソウルの一部地域で不動産価格が再び高騰している問題について李大統領は「市場原理を尊重しながら消費者を保護し、不動産市場の安定に取り組む」と発言。多様な政策手段が活用可能だと述べた。
対日関係では柔軟かつ合理的なアプローチ
李大統領は日本との関係について、両国は切っても切れない関係にあるとあらためて語り、領土問題を含む難しい課題が残っていると指摘。「右手で争いながらも左手では握手をする。つまり、柔軟かつ合理的なアプローチが必要だ」と発言した。
北朝鮮との関係を巡っては、韓国からの人道支援が北朝鮮国民の生活改善につながると指摘。南北の国境付近で行っていた拡声器による宣伝放送について、予想よりも早く北朝鮮側が停止したと発言した。
リベラルな政治姿勢の李氏は、就任直後の支持率が近年では最も高い水準にある。市場重視の政策への期待から韓国資産の価値は上昇基調にある。消費者信頼感指数は4年ぶりの高水準に到達。韓国総合株価指数(KOSPI)は尹錫悦前大統領が4月初めに失職して以降、約25%上昇し、世界でも屈指のパフォーマンスを見せている。
李大統領は、株価上昇は国民の信頼回復の表れだと述べ、「KOSPI5000」時代の実現という政権目標をあらためて強調した。
原題:Lee Says Unsure South Korea Can Land US Trade Deal by Deadline(抜粋)
--取材協力:Shinhye Kang、Seyoon Kim、Jaehyun Eom.
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