2025年春闘の平均賃上げ率は34年ぶり高水準となり、連合が掲げた目標の「5%以上」を2年連続で達成した。賃上げのモメンタム(勢い)が持続していることを示した形で、日本銀行の金融政策正常化を支える材料となる。

日本最大の労働組合の全国組織である連合が3日発表した今春闘の最終回答集計によると、平均賃上げ率は5.25%と、1991年(5.66%)以来の高い伸びを維持した。毎月の基本給を引き上げるベースアップ(ベア)は3.70%で、3%以上としていた目標を達成した。組合員300人未満の中小組合の賃上げ率は4.65%。昨年を上回り、92年(5.10%)以来の高水準だった。ベアは3.49%だった。

日銀は経済・物価が見通しに沿って推移すれば、利上げで金融緩和度合いを調整する方針を維持している。植田和男総裁は6月の講演で、賃金と物価が緩やかに上昇していく見通しを繰り返し強調し、利上げに前向きな姿勢を示唆していた。今回の結果は、賃金面で日銀の見通しに沿った動きが続いていることを裏付ける内容だ。

 

ブルームバーグが6月の金融政策決定会合前に実施したエコノミスト調査によると、次回の利上げは来年1月が最も多く、調査対象53人のうち34%が予想。今年10月が30%で続いた。賃金・物価が想定通り推移する一方、トランプ米政権の通商政策などによる不確実性がリスクとして意識されている。

格差是正

中小組合の賃上げは引き続き高い伸びを維持したものの、大手との格差是正分を加えて「6%以上」と掲げた目標には届かなかった。社会全体の賃金水準を上げるには中小の賃上げが重要だとし、政労使は協調して価格転嫁の円滑化などの環境整備に取り組んでいる。だが、25年は平均と中小との差は0.6ポイントと、24年(0.65ポイント)から小幅な縮小にとどまった。

連合の仁平章総合政策推進局長は記者会見で、今春闘に関して「中小組合が健闘したことは間違いない。賃上げの力も着実に広がっている」と評価した。一方、「最終集計で5%に届かなかったことは残念だ」とし、5月以降の賃上げの伸び悩みは価格転嫁の不十分さや、物価高による内需の低迷が影響したとの見方を示した。

連合の加盟組合員は約700万人で、就業者数の約1割を占める。業種別の賃上げ率では情報・出版(5.65%)、製造業(5.48%)が上位に並んだ。

 

食料品をはじめとする物価上昇が家計を圧迫し、賃金の改善を実感しにくい状況が続いている。5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)はコメを中心とした食料の伸び加速で前年比3.7%上昇と、23年1月以来の高水準となった。物価高の影響で実質賃金は昨年が前年比0.3%減、今年も4月までマイナス圏で推移している。今後は実質賃金がプラスに転じ、それが持続するかが焦点となる。

石破茂首相は「賃上げこそが成長戦略の要」との考えを示し、物価上昇を上回る賃金上昇の実現に取り組んでいる。3日に公示された参議院選挙では、物価高対策として給付や減税が争点となる中、石破氏は「何よりも賃上げ」と強調した。

来年の春闘に向けては、米国の関税措置の影響が懸念される。上乗せ関税発動の猶予期限が9日に迫る中、日米の交渉で目立った進展が見られていない。賃上げ交渉では前年の業績が判断材料となるため、関税措置により収益が圧迫されれば来年の春闘に悪影響が及ぶ可能性がある。

(6段落目に連合総合政策推進局長の発言を追加して更新しました)

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