トランプ米大統領の政策に対し、連邦地裁が全国規模で差し止め命令を出す権限を、米連邦最高裁判所が制限した。ただし米国で生まれた子どもに自動的に米国籍が与えられる「出生地主義」を巡る係争は、最終的な決着が先送りされた。

最高裁が27日に下した判断によれば、トランプ大統領が大統領令で指示した出生地主義の修正は、30日後に発効する。複数の州がこの差し止めを求めた訴訟は下級裁に差し戻され、現行の差し止めを延長する是非を巡って審理が行われるが、その適用範囲は全米ではなく、各地裁の管轄地に限定される。

最高裁の保守派判事6人が連邦地裁の権限に新たな制限を加えることに賛成し、リベラル派判事3人が反対した。

トランプ氏はこの決定を「画期的な勝利」と称賛した。全国的な差し止めを命じる地裁の権限が限られることは、出生地主義のほかにも、複数の野心的な政策アジェンダを法的措置から守ることにつながりかねない。1人の地裁判事が連邦政府の政策を全米的に阻止する権限を持つべきではないというのが、同氏と関係者らの一貫した主張だった。

多数派意見を代表してバレット判事は「連邦地裁は大統領府の全般的な監督を行使するものではない」との意見書を発表。「地裁は議会に与えられた権限に基づいて、事件や係争を解決する役割を持つ」と説明した。

一方でリベラル派のソトマイヨール判事は「大統領はペン1本で、合衆国憲法を公然と嘲笑した」と意見書で批判。「最高裁はこれに立ち向かいもせず、そのまま受け入れた」と続けた。

多数の政策差し止め解除へ

トランプ氏は「合衆国憲法および権力分立、法の支配にとって画期的な勝利」と評価。これまで連邦地裁に差し止められている政策の数々について、政府は差し止め解除に向けて取り組む方針だと述べた。

「この決定のおかげで、多数の政策や全国規模で誤って差し止められている政策を適切に推進することが可能になった。出生地主義の終了やサンクチュアリ都市への資金提供、難民再定住の停止、不要な資金拠出の凍結、トランスジェンダー手術費用の連邦負担防止など、米国民を優先する多数の政策がこれに含まれる」とトランプ氏はホワイトハウスで記者団に語った。

トランプ氏の大統領令に異議を唱える州は、法的闘争を継続する意向だ。ニュージャージー州のプラトキン司法長官は声明で、大統領令が直ちに発効しないことを指摘し「地裁でわれわれの考えを引き続き主張できる機会を歓迎する。特に出生地主義に関する大統領のアプローチは混乱を招くだけで、各州に危害が及ぶのは必至だと示す必要がある」と表明。「明らかに憲法に反する大統領令を、裁判所が引き続き差し止めるとわれわれは確信する」と続けた。

原題:Supreme Court Curbs Nationwide Injunctions in Birthright Fight(抜粋)

(トランプ大統領の発言やニュージャージー州の声明など反応を加えます)

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