(ブルームバーグ):米連邦公開市場委員会(FOMC)の複数メンバーによる最近の発言からは、関税措置に伴う物価上昇が持続的なインフレに発展しないと確信するには、なお数カ月を要するとの見方が示された。
米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事とボウマン副議長は、インフレ抑制が保たれた場合、早ければ7月29-30日のFOMC会合での利下げにオープンになり得る姿勢を見せ、注目を集めた。
しかしその後、パウエルFRB議長をはじめ、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁やサンフランシスコ連銀のデーリー総裁など、多くの政策当局者はこうした見方に冷や水を浴びせている。
デーリー総裁は26日、ブルームバーグTVとのインタビューで「私の中心的な見方としては、秋ごろから金利の調整を開始できるというものであり、その考えは特に変わっていない」と語った。
インフレは今年に入り、予想以上のペースで減速している。米個人消費支出(PCE)価格指数は4月に前年同月比で2.1%上昇し、中銀の目標である2%をわずかに上回る伸びにとどまった。
また26日発表された失業保険の継続受給者数は2021年11月以来の高水準に増加。継続受給者数はここ1カ月半に大きく増加しており、失業状態が長期間続いている人が増えていることが示唆された。一方で新規失業保険申請件数(21日終了週)は減少した。
デーリー氏は労働市場には減速の兆しはあるものの、悪化を示す警告サインは見られないと指摘した。
一方、この日発言した他の2人の当局者は次回のFOMC会合で利下げを支持する用意がないことを示唆した。
リッチモンド連銀のバーキン総裁はニューヨーク・ビジネス経済協会(NYABE)主催のイベントで関税が物価に上向きの圧力をかけると予想。不確実性がなお非常に大きいことから、FOMCは政策金利を調整する前に見通しが一段と明確になるのを待つべきだとした。
バーキン氏は「どの方向にせよ、性急に進むことには得るものがほとんどない」と指摘。「現在の経済の強さを踏まえれば、われわれには情勢の展開を辛抱強く見守り、見通しが明確になるのを待つ時間がある」と語った。
シカゴ連銀のグールズビー総裁は、インフレが当局の目指す2%へと明らかに減速し、経済見通しを巡る不確実性が後退すれば利下げ再開もあり得るとの考えを示した。
グールズビー氏は「良好なデータが得られており、関税の影響も限定的にとどまるかもしれないと楽観しているが、確証を持ちたい」と述べた。
ボストン連銀のコリンズ総裁も、今年は少なくとも一度は利下げがあると見込みつつ、7月はまだ利下げには早過ぎるとの見方を示した。
「7月会合までに得られるデータは、あと1カ月分に過ぎない」とコリンズ氏はブルームバーグニュースとの電話インタビューで指摘。「それ以上のデータも確認したいと考えるだろう」と述べた。
パウエル議長は24日行われた下院金融委員会での証言で、関税がもたらす物価見通しを巡る不透明感がなければ、インフレ鈍化を踏まえ、今ごろは利下げに踏み切っていた可能性が高いと述べた。その一方で、現時点では利下げを急ぐ必要はないとも語った。
同議長は「関税の影響は、その最終的な水準など複数の要因に左右されるだろう」とし、「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ態勢が整っている」と説明した。
原題:Majority of Fed Officials Leaning Against July Interest-Rate Cut(抜粋)
原題:Fed’s Collins Says July Likely Too Early for Rate Cut (1)(抜粋)
(第13段落にボストン連銀総裁のコメントを加えます)
--取材協力:Maria Paula Mijares Torres、Amara Omeokwe、Maria Eloisa Capurro、Lisa Abramowicz、Jonathan Ferro.
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.