(ブルームバーグ):かつて「終わった街」や「負のスパイラル」とまで言われた米サンフランシスコの高級住宅市場が大復活を遂げつつある。
サザビーズ・インターナショナル・リアルティがまとめた2025年年央版「ラグジュアリー・アウトルック」で明らかになった。同リポートは、公表前にブルームバーグ・パースーツに独占提供された。
主執筆者のブラッドリー・ネルソン最高マーケティング責任者(CMO)は、「サンフランシスコは瞬く間に人を引きつける場所となった。起業家やテック投資家が『人工知能(AI)に投資したい』と考えた場合、技術的専門知識を持つ人材プールへのアクセスの観点から、サンフランシスコやベイエリアで事業展開すべきだと判断したためだ」と説明した。
ネルソン氏によれば、サンフランシスコでは24年、2000万ドル(約29億円)超の住宅売買件数が過去最多となった。その中には、アップルの共同創業者、故スティーブ・ジョブズ氏の夫人、ローレン・パウエル・ジョブズ氏が7000万ドル前後で購入したパシフィックハイツ地区の超高級物件も含まれる。
ネルソン氏は「AI分野は世界経済における次の大きな富の源泉になるとの見方がある」と指摘。サンフランシスコの「素晴らしいアンバサダー」と同氏が評するルーリー市長も、市の再生に寄与したと分析した。
また、サンフランシスコの復活を示すさらなる証拠として、超高級物件の買い手が数年単位・数百万ドル規模の改修に資金を投じている点にも言及。これにより、そうした物件が単なる一時的な住居ではなく、長期的な定住先と見なされていることがうかがえる。
全体として、「25年の高級不動産市場は恒久的な安全資産として脚光を浴びている。顧客は高級不動産の取得にかなり積極的になっている」などとネルソン氏は語った。
このリポートで浮き彫りになった他の3つの注目トレンドを以下に挙げる。
ニューヨークの高級不動産市場も活況
サザビーズによると、ニューヨーク市で1000万ドル以上の物件の販売件数は25年1-3月(第1四半期)に115%増加。オフィス復帰の方針を掲げる企業が増えているためだとネルソン氏はみている。
「ニューヨークでは再開発の大きな動きが進んでおり、非常にエキサイティングだ」と話す同氏は、西57丁目111番地の超高層ビル「クアドプレックス80」を含む一連の新規開発物件が市場に出回っていることにも言及。同物件の4階構造のペントハウスは1億1000万ドルで売り出されたばかりだ。
高級リゾート化するユタ州ディアバレー
ユタ州における1500万ドル超の取引は今年に入り15件と、同州としての過去最多を記録。ネルソン氏によれば、その中心には「ディアバレー・リゾートの拡張」がある。
この地域では、他の山岳リゾートではあまり見られない、スキー場に直接アクセスできる新たな大規模宅地開発が進んでいるほか、フォーシーズンズ・プライベート・レジデンスのコンドミニアムといった新築ブランド住宅も登場。これまでなかったようなぜいたくなサービスが受けられるという。
英欧の不動産取得に動く米富裕層
リポートによれば、英国やポルトガル、イタリア、フランス、スペインなどで、米国人による不動産取得の動きが活発化している。経済・政治・ライフスタイルの変化に加え、対ユーロやポンドなどの通貨に対して有利な為替レートが背景にあるという。
「ロンドンの同僚の話では、現在の超高級不動産市場を支えているのは米国人の買い手だ」とネルソン氏は話している。
原題:San Francisco’s Luxury Housing Market Is Booming Thanks to AI(抜粋)
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