(ブルームバーグ):物言う株主の海外アクティビストが日本の倉庫株を大量保有している事実が判明し、今年上期(1-6月)のパフォーマンスは良好だ。各社が持つ不動産の価値が見直され、株主還元など資本効率の改善につながると期待されている。
今年5月にシンガポールの3Dインベストメント・パートナーズが5%以上保有していることが分かった三井倉庫ホールディングス株の年初来上昇率は57%(24日現在)。同社を含む倉庫・運輸関連業指数も20%以上高く、上昇率はゲーム企業などその他製品に次ぐ2位。同期間に0.1%安だった東証株価指数(TOPIX)を大きくアウトパフォームしている。

フィリップ証券の笹木和弘リサーチ部長は倉庫株の強さについて、不動産を持っている点にアクティビストが着目し、「含み益を吐き出させようという動きがある」と指摘。投資家からの注目はまだまだ続き、「今年1年を見た場合、安定的にパフォーマンスを出しやすい」とみている。
5月は、国際物流大手の日新の創業家ら経営陣と米投資ファンドのベインキャピタルが組み、株式を非公開化すると発表。6月に入ると、米ヘッジファンドのダルトン・インベストメンツが荷主に代わり物流業務を担うサード・パーティー・ロジスティックス(3PL)のセンコーグループホールディングス株を5%超保有していることが明らかになった。
日新株は年初来70%以上上げ、倉庫・運輸指数の上昇率トップ。センコーGも29%高と、同社が属する陸運業指数の上昇率6.7%を上回る。
東京証券取引所が2年前から上場企業に資本コストや株価を意識した経営の実現を強く求める中、アクティビストが株式保有を通じて経営の効率化を迫る動きも活発化しており、三菱UFJ信託銀行のまとめではアクティビストによる今年の総会での株主提案数は137と過去最多だ。この中には不動産の活用や売却もあり、倉庫や物流企業が人気を集める一因となっている。

倉庫や物流企業では不動産事業が一定の割合を占める企業が多く、三井倉庫Hの前期(2025年3月期)営業利益構成比で不動産賃貸は9%。ブルームバーグのデータによると、渋沢倉庫の前期売上高の約7.6%が不動産事業だ。国土交通省が毎年公表する25年の地価公示によれば、全用途平均で2.7%上昇と4年連続で値上がりし、大型物流施設用地の需要が地価押し上げを後押ししている。
岡三証券の内山大輔シニアストラテジストも、資本効率の改善度合いが低い業種が投資家に目を付けられており、倉庫や物流業界は「資産が大きい割には株主資本利益率(ROE)が高くない」点が注目に値すると言う。実際、倉庫セクターのROEは7.8%と、TOPIXの9.1%より低い。
経営改善余地の大きさや電子商取引(Eコマース)市場の拡大による物流需要の高まりに投資家の視線が集まっているが、今後米国の関税政策や地政学リスクが世界経済に大きな悪影響を及ぼせば、倉庫・物流業界の収益に影を落とす可能性もある。
岩井コスモ証券の清水範一アナリストは、米関税の発動前のように事前に在庫を積み増す動きはプラスに働く半面、中東情勢の混迷で原油輸送に支障を来したり、米中貿易戦争の悪化でサプライチェーン(供給網)が崩れたりすれば、「物が入ってこない状況が出てくるかもしれない」と警戒感を示している。
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