(ブルームバーグ):大和証券グループ本社は、シンガポール系の投資ファンドなどと連携し、1000億円規模の不動産私募ファンドを新たに組成する方針だ。株式市場などの動向に業績が左右されにくい不動産アセットマネジメント部門の強化につなげる。
アセットマネジメント戦略部長の大石理嗣氏が、ブルームバーグの取材に対して明らかにした。大和証Gが37%を出資する不動産会社のサムティホールディングスと同社筆頭株主でプライベートエクイティー(PE、未公開株)ファンドのヒルハウスと連携し、組成する。
国内外の機関投資家から早期に1000億円超の資金調達を目指し、インフレに強い国内の賃貸住宅やホテルを投資対象とする。運用期間に柔軟性があり、投資対象が明確な私募ファンドは、投資家からの関心が高い。
大和証Gは大手証券会社の中でも不動産アセマネ部門で先行する。これまで取り組んできた上場不動産投資信託(REIT)や私募REITに加え、私募ファンドの拡大を図る。運用資産残高を積み上げ、運用報酬などの安定収益の比率を高める。

三井住友トラスト基礎研究所の前田清能私募投資顧問部長は「1000億円の国内外の投資資金を不動産ファンド市場に呼び込めることは、不動産私募ファンドへの国内外投資家からの関心が集まるため、市場全体にはポジティブ」とコメントした。
大和証Gは2030年度までに不動産の運用資産残高を24年度末比25%増の2兆円までの拡大を目指す。今年4月にはアセットマネジメント戦略室を部に格上げし、事業全体を統括する担当役員も置いた。大石氏は「残高を拡大すれば、収益性を上げることができ、企業価値向上にもつながる」と述べた。
賃貸マンションなどを手がけるサムティHDは今年1月、ヒルハウスが株式公開買い付け(TOB)を実施し、非上場化した。筆頭株主だった大和証Gは非上場化後も株式の保有を継続。ヒルハウスの資金調達能力や国際的な投資家ネットワークを活用するなどして、サムティHDのアセマネ事業の強化で3社が連携する意向を示していた。
ヒルハウスは米イエール大学基金から出資を受けて05年に設立された世界最大級のオルタナティブ投資運用会社の一つ。欧米やアジア、中東の大学基金、政府系投資ファンドなどの資産を運用している。20年に不動産を軸とした投資戦略を打ち出し、アジア地域で16社を超える不動産会社に対して35億ドル(約5000億円)以上を投資している。
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