フジ・メディア・ホールディングスが25日に開いた株主総会で、会社側が提案していた取締役11人の選任が可決した。清水賢治社長を除く全取締役を刷新し、スポンサーからの信頼回復や企業統治(コーポレートガバナンス)改革に取り組み、経営の立て直しに乗り出す。

米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが株主提案したSBIホールディングスの北尾吉孝氏を含む取締役12人はすべて否決された。清水氏は同日夜に都内で記者団の取材に応じ、会社提案の候補は8割以上の信任を得て、ダルトン側は3割に達しなかった模様だと説明。経営改革案で掲げた目標達成に向けて、さらに動きを加速させていくことで視聴者や取引先などの信頼回復を目指すと意気込んだ。

会社側の提案が可決され、順調な船出となったものの、課題は依然として多い。ガバナンス不全をきっかけに離れていったスポンサーを呼び戻すことに始まり、5月に提示した改革策を実現する必要もある。

経団連会長で、日本生命保険取締役の筒井義信氏は24日の定例会見で、フジテレビへのCM再開について、総会後すぐに再開にはならないと話していた。フジHDやフジテレビに対する外部の目は依然として厳しい。

ダルトンは、株主総会の結果を受けて、新経営陣による改革アクションプランの確実な実行と企業価値の向上に期待しているとのコメントを発表。大株主として、フジHDの不動産事業のスピンオフ(分離・独立)の要求などを続けていくとした。

4時間半超で終了

午前10時から都内で開催された株主総会は4時間半超で終了した。冒頭、金光修元社長が性加害問題をきっかけにガバナンス不全が浮き彫りとなり混乱を招いたことなどを陳謝した。質疑応答で株主からは、番組に出演する芸能人のスクリーニング方法などについての質問があった。総会の議長を務める金光氏の解任動議が提出される場面もあった。

フジHD本社

実業家でフジHD株主の堀江貴文氏は、放送法で定める「認定放送持株会社」が経営立て直しを阻んでいると指摘。同認定を返上する考えはあるかどうか質問した。別の株主から堀江氏が取締役になる可能性を問われ、清水氏が、現時点で選任予定はないもののアドバイスを受ける可能性はあると述べた。

途中退席した堀江氏は報道陣の取材に対し「清水さんはめちゃくちゃちゃんとした人だったので、すごい良くなる可能性はでてきたのかなと思う」とコメントした。

フジHDは当初、金光氏ら4人を留任させる予定だったが、ダルトンが経営責任を問わない姿勢を批判し、SBIの北尾氏を含む12人を立てた。対立候補の擁立もあり、フジHDは4人の退任を決め、新たに取締役候補として、ファミリーマート元社長の沢田貴司氏ら4人を加えた。

足元の業績を下支えする不動産事業の在り方を巡っても方針が異なっており、双方は対立構造は否定するが事実上の委任状争奪戦(プロキシファイト)の様相を見せていた。共同創業者のジェイミー・ローゼンワルド氏は1人でも選ばれれば、経営への影響力を強めることができ、不動産事業のスピンオフも「真剣に考えざるを得なくなる」と話していた。

フジHDを巡っては、元タレントの中居正広氏が起こした女性との性的トラブルへの対応をはじめ企業統治(コーポレートガバナンス)不全が浮き彫りとなり、スポンサー離れが深刻な経営課題となっている。

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