中東情勢の緊迫化を受け、日本の大手金融機関や商社、プラントなど幅広い企業が対応に追われている。イランとイスラエルだけでなく、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイなどの周辺地域の駐在員にも退避を呼びかけるなど余波が広がってきた。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の三菱UFJ銀行は、ドバイなど中東諸国にいる一部の駐在員について、国外退避の検討を始めた。家族の退避はすでに始めており、同行が必要な場合などは駐在員本人についても検討する。中東地域への不要不急の出張も原則、認めていない。広報担当者が23日に明らかにした。

米軍がイランの核関連施設を攻撃し、イランは報復を示唆した。情勢のいっそうの緊迫化を受け、日本企業も対応を進めている。

 

みずほ銀行を傘下に持つみずほフィナンシャルグループ(FG)は中東やその近郊の駐在員に注意喚起し、退避などの対応を個別に協議している。三井住友FG傘下の三井住友銀行もイラン、カタール、UAEなど一部拠点で順次、退避を始めた。

MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上火災保険も、ドバイとアブダビに拠点があるUAEの駐在員について、日本などへの一時退避を調整している。

商社では丸紅が一部の国について帯同家族の退避を開始した。イランやイスラエルのほか、湾岸協力会議(GCC)6カ国などへの出張を当面禁止した。駐在員・帯同家族などの安全を第一に対応しているという。

日揮ホールディングスはサウジアラビア、イラク、UAEでプラント事業を展開している。現状ではプラント作業の中断はないという。100人程度いる駐在員について、万が一に備えた退避の準備を進めている。

千代田化工建設ではカタールとUAEに約130人の従業員が駐在している。帯同家族の一部がすでに帰国を開始した。現時点では現地のプロジェクトに直接の影響は生じていないが、情勢を注意深く見守って対応していくとした。

コスモエネルギーホールディングスはUAEとカタールに約70人の従業員が駐在している。希望する駐在員家族の日本への帰国を支援する方針を固めた。全社員に対し中東諸国への出張は当面禁止する。

航空では迂回(うかい)ルートを採用する動きも出る。日本航空(JAL)は、羽田とカタールの首都ドーハ間の直行便でペルシャ湾とオマーン湾上空を避けるルートをとる。広報担当者によると、通常に比べて20分ほど飛行時間が延びるという。

商船三井はオマーンやカタールなどで駐在員の退避はしていないが注意喚起をしている。ペルシャ湾の運行に変化はないが、船舶は24時間体制で監視しており船長と直接連絡を取りながら安全を確認している。

各社の広報担当者がブルームバーグの取材に答えた。

(6段落目以降に企業の対応を追加します。更新前の記事は三菱UFJ銀に関する記述を訂正済みです)

--取材協力:佐野七緒、吉田昂、堀内亮、佐々木礼奈.

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