太陽ホールディングス(HD)の株主は、佐藤英志元社長の取締役再任を拒否した。日本の株式市場では極めて珍しく、アクティビストの勢力が一段と拡大していることを示す事例となる。

太陽HDは23日、週末の定時株主総会での投票結果を受けて、副社長の斎藤斉氏が佐藤氏に代わって社長に就任したと発表した。日本で経営トップの人事が株主の反対で覆された事例は数少ない。数少ない例で言えば、2019年に、住宅設備メーカーのLIXIL(リクシル)グループの株主が、会社側提案の取締役候補者らを拒否。元社長の瀬戸欣哉氏が復帰を果たした。

今回の佐藤氏の再任否決もまた、アクティビストらが企業価値向上を掲げ、経営方針の転換を求めている流れを明確に示している。今年の定時株主総会シーズンでは、過去最多の株主提案が提出されており、取締役会の改革や企業の非上場化など、経営判断に対する厳しい要求が相次いだ。

東証株価指数(TOPIX)が下落する一方、太陽HDの23日の株価は続伸し、前営業日比で一時2.5%高となった。

21日の総会での佐藤氏への反対票は、同社に経営戦略の見直しを迫る可能性が高い。佐藤氏は今月、資本提携(非公開化を含む)に関する正式な提案を、5社未満のプライベートエクイティー(PE、未公開株)ファンドから受けていると明かしていた。

太陽HDのケースは「日本が変化していることを示しており、株主はより良いガバナンス、資本効率、コア事業の強みを軸にした事業ポートフォリオを求めて投票している」と、コーポレートガバナンス(企業統治)専門家のニコラス・ベネシュ氏は指摘する。「日本において、現職の最高経営責任者(CEO)が『推し進めた戦略が機能しなかった』という明確な理由で解任されたケースは記憶にない」と述べた。

今回の総会では、DICや香港のヘッジファンド、オアシス・マネジメントを含む主要株主らが佐藤氏の再任に反対を表明しており、少なくとも株主の4割が反対票を投じるとみられていた。

DICは、太陽HDが買収提案を検討する委員会を設置するスピードが遅く、潜在的な買収先との対話に進展がみられないと批判した。オアシスは、佐藤氏の報酬が多すぎると指摘していた。太陽HDの提出書類によると、佐藤氏の25年3月期の総報酬は3億700万円だった。

総会後、オアシスは声明で、佐藤氏が太陽HDを率い続けることは、コーポレートガバナンスの改善や企業価値向上の観点から現時点で有害であるとの考えから、再任反対を呼び掛けていたとした上で「株主の総体意思としてオアシスの主張が追認されたことを喜ばしく思う」と表明した。

(下から2番目の段落の決算期を修正します)

--取材協力:Ken McCallum.

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