投資家は20日、米国株関連で三つのデリバティブ(金融派生商品)満期日が集中する「トリプルウィッチング」に備えている。想定元本総額は6兆5000億ドル(約945兆円)に上るとの試算もあり、数週間抑えられていた株価変動が再び活発化する可能性がある。

トリプルウィッチングは毎四半期の最終月の第3金曜日に起こる。当日の株式市場ボラティリティー(価格変動性)を特段高めるとはみられていないが、翌週以降の急変動につながる可能性はある。

米株式相場は5月初旬以降、比較的穏やかな値動きが続いている。背景には、今年のそれより前の時期に大量に仕込まれた米国株に弱気のオプション取引による「ピン効果」があるとみられる。ピン効果は、取引量が多いオプションの満期日が近づくにつれ、株価がその権利行使価格付近に引き寄せられるように推移していく傾向を指す。

調査会社アシム500のロッキー・フィッシュマン創業者によれば、当時はS&P500種株価指数が史上最高値付近まで回復する可能性は低いとみられていた。4月初旬の関税問題による相場混乱時に多くの投資家は株価下落への備えとしてプットオプション(売る権利)を購入したが、その資金はS&P500種の現水準(5981)をやや上回るレベルでコールオプション(買う権利)を売ることで捻出されていたという。

「関税問題で市場が混乱していたため、6000という水準に達するのは難しいと見なされていたかもしれない。そのため、投資家は6000付近でコールを売り、その資金で下落リスクに備えていた」とフィッシュマン氏は説明。今回のトリプルウィッチングについて「過去最大級の規模」と位置付けている。

証券会社やマーケットメーカーによるヘッジ行動が株式市場に波及する可能性もある。フィッシュマン氏は、5月以降の米株市場が中東情勢の緊張や関税交渉の継続にもかかわらず比較的落ち着いた推移となった背景には、こうしたヘッジ活動が影響しているとみている。

同氏によると、市場はいま「ポジティブ・ガンマ」の状態にあり、株価が上がれば売り、下がれば買うという動きが促されやすくなっている。

シティグループのストラテジスト、ビシャル・ビベック氏とスチュアート・カイザー氏の研究によると、四半期ごとのトリプルウィッチングは通常、月次のオプション満期日と比べて変動性が際立って高まるわけではない。それでも両氏は顧客向けの最近のリポートで、今回のイベントは「注目に値する」との見方を示した。

満期を迎える上場デリバティブの総額を算出する標準的な手法は存在せず、資産クラスや対象契約の範囲によって異なる。

シティの試算では20日に期限を迎えるデリバティブの想定元本は株価指数オプション4兆2000億ドル、米上場投資信託(ETF)オプション7080億ドル、個別株オプション8190億ドルなどを含めて計5兆8000億ドル。フィッシュマン氏の推計では、株価指数先物オプションも含めると、およそ6兆5000億ドルに上る。

原題:A $6.5 Trillion ‘Triple Witching’ Heralds Return to Volatility(抜粋)

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