(ブルームバーグ):米証券取引所のナスダックが日本企業の上場誘致に動き出している。決済アプリ大手のPayPay(ペイペイ)が米国での上場準備を開始したことが5月に明らかになる中、海外上場を選択肢とするケースは今後増える可能性がある。
ナスダックと会計事務所のマーカムアジアは今月、東京・六本木のグランドハイアットホテルで新規株式公開(IPO)に関する会議を開催した。日本企業の米国上場をテーマに討議する時間も設けられ、投資銀行家や会計士、弁護士などが上場を検討する日本企業と交流した。
企業が米上場を選ぶ理由の一つは株価水準だ。ナスダック上場企業の株価は、東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の約2倍の株価評価尺度(バリュエーション)で取引されている。
また、金融サービスを提供するHiJoJo Partnersの森本曜一執行役員によると、東京証券取引所がグロース市場の上場維持基準を引き上げる計画を踏まえると、海外での上場が魅力的になる可能性がある。
「日本でIPOを行う場合、大企業でない限り規模が小さ過ぎることから海外投資家の関心は低い」と森本氏は話す。一方、「投資銀行を活用し、投資家とのミーティングで魅力的なストーリーを語れるなら、ナスダックでのIPOでは必ずしもそうとは限らない」と言う。

ブルームバーグがまとめたデータによると、今年米国で上場した日本企業は特別買収目的会社(SPAC)を除いて3社と、ゼロだった昨年から増えた。日本企業が米上場に前向きになりつつある兆候だ。
もっとも、今のところ米国で上場した日本企業の成績は明るいとは言い難い。ブルームバーグのデータでは、過去10年間で米市場でIPOした13社のうち、多くの企業で資金調達額が1億ドル(約145億円)を下回った。しかも、ほぼ全ての株価が上場後に70%以上下落している。
ナスダックが東京で開いたイベントには、香港やニューヨークを拠点とする参加者も多く見られた。IPOやSPAC上場サービスを手掛ける中国のJSキャピタル共同創業者、エリック・ルー氏がその一人だ。同氏は、日本企業の案件に参画する機会が増えるとの見方から、今回初めて日本でのIPOイベントに参加したと話す。
マーカムアジアの共同経営パートナー、ドリュー・バーンスタイン氏は、日本は他のアジア諸国に比べて地政学的な優位性があり、日本企業は魅力的な上場候補となる可能性があると指摘する。
「現在、日本で見られる案件のほとんどは依然として規模が小さい」と同氏。「しかし、われわれのカンファレンスで見たように、極めて高い関心があることが明らかだ」と述べた。
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