フランスの自動車メーカー、ルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)の退任が決まり、同社の再建路線に不透明感が広がっている。

ルノーは15日遅く、デメオ氏が7月15日付で退任すると発表した。今年は最高財務責任者(CFO)だったティエリー・ピエトン氏も退社している。同氏は医療機器大手のメドトロニックに移った。

デメオ氏の退任は、世界の自動車産業が困難に直面する中で再建を進めていたルノーにとって、大きな打撃だ。

電気自動車(EV)シフトの行方が不確実である上、貿易摩擦の激化や中国勢の台頭も逆風となっている。「グッチ」などの高級ブランドを傘下に置く仏ケリングは16日、デメオ氏(58)を次期CEOに指名したと発表した。

 

ラフィナンシエール・ドレシキエのファンドマネージャー、アングラン・アルタズ氏は「ケリングにとっては明らかに好材料だが、ルノーにとっては悪いニュースだ。ルノーの戦略に影響を及ぼす可能性がある」との見方を示した。

バーンスタインの株式アナリスト、スティーブン・ライトマン氏は顧客向けリポートで、ルノーのラインアップはデメオ氏の下で「完全に刷新された」と指摘し、今回の退任はショックで「ルノーにとって明白な痛手だ」とコメントした。

デメオ氏は2月、EV「ルノー5」や「ダチア」ブランドのスポーツタイプ多目的車(SUV)「ビッグスター」などの新型車を軸とした中期計画を策定中だと説明していた。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の自動車業界担当シニアアナリスト、マイケル・ディーン氏は、「ルノーを新型コロナウイルス禍後の危機から立て直したデメオ氏の退任は損失」と分析。欧州市場では需要の伸び悩みや価格競争の激化、EV移行のコスト高などが引き続き課題だと説明した。

デメオ氏がCEOに就任した2020年半ば、ルノーは1-6月(上期)としては過去最大の赤字を計上し、約1万5000人の人員削減を発表するなど危機的状況にあった。

その後、ロシアのウクライナ侵攻により、ロシア市場から撤退を余儀なくされたものの、業績はパートナーの日産自動車を大きく上回る水準にまで回復した。

ルノーと日産は関係見直しを進めており、3月には相互出資比率を従来の15%から10%へ引き下げることで合意。ブルームバーグは5月、日産が1兆円規模の資金調達の一環として、保有するルノー株の一部売却を検討していると報じた。

ジェフリーズのアナリスト、フィリップ・ウショワ氏はリポートで、「新戦略の発表や日産との関係整理を控えたこの時期のリーダー不在は痛手だ」と指摘した。

事情に詳しい関係者によると、ルノーの取締役会はデメオ氏の退任前に後任のCEOを決める方針。仏財務省の当局者は、政府も次期CEO選出に関与するとしている。仏政府はルノーの筆頭株主として15%を出資している。

原題:Renault CEO’s Resignation Throws Fragile Turnaround Into Doubt(抜粋)

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