米投資ファンドのカーライル・グループは、昨年日本に特化した第5号買収ファンドで4300億円の資金を集めたことを受け、年内に新たに6人を東京で採用する。

同社の富岡隆臣共同代表は16日のインタビューで、これまでにジュニアから中堅レベルの人材をすでに4人採用しており、年末までにさらに6人追加する考えを明らかにした。これにより、同社の日本国内投資の専門家は35人に達する見込みだ。

長期にわたり低金利政策が続いたことに加えて、大企業から中小企業まで事業の売却を前向きにとらえる企業が多いという環境を背景に、近年日本ではプライベートエクイティー(PE、未公開株)ファンドが活動を活発化させている。また、投資家の間でも日本特化型ファンドへの投資意欲が高まっている。

富岡氏は、いかに有能な人材を獲得できるかでファンドのパフォーマンスが決まると指摘する。新たに日本に進出したファンドなどが積極的に人材獲得に動いていることから、「競争環境は非常に高まっている」と述べた。

一方で、トランプ米大統領の関税政策による市場の混乱は、日本のみならず世界的に企業や投資家のマインドに不透明感をもたらした。そのため、富岡氏は新規の投資機会の評価や新規株式公開(IPO)による出口戦略の判断も複雑化しているとみている。

カーライルの日本での投資対象は国内志向が強い中堅企業が中心で、これがグローバルな貿易摩擦の影響をある程度回避する要因となっている。同社が今年予定している日本での1000億円の投資は計画通り進められていると述べた。

オリオンビール

カーライルは2019年に野村キャピタルパートナーズと共同でオリオンビール(沖縄県豊見城市)の株式を非公開化。オリオンビールは国内の消費者を対象にしており、グローバルな貿易問題の影響は受けにくいとした上で、年内のIPOを目指していることも明らかにした。

また、関税政策は日本でのPE投資にあまり影響を与えておらず、むしろ株主価値向上への圧力の高まりが、企業の非中核事業の売却や非公開化の動きを後押ししているとの認識を示した。

カーライルは非上場化を目指して昨年以降、ケンタッキー・フライドチキンを国内で展開する日本KFCホールディングスや人材管理システムを手掛けるカオナビの株式を公開買い付け(TOB)で取得している。

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