辞任、暗殺、拘束、弾劾、自殺…歴代大統領の受難

韓国の第1代から第3代大統領である李承晩(イ・スンマン)元大統領は、3・15不正選挙をきっかけに起こった4・19革命により、1960年4月26日に辞任を表明し、翌27日に国会に辞表を提出した。その後、第4代大統領に就任した尹潽善(ユン・ポソン)元大統領も、当時陸軍少将だった朴正煕(パク・ジョンヒ)氏による5・16軍事クーデターで実権を失い、在任期間わずか1年7か月で辞任を余儀なくされた。

1963年に軍事クーデターを通じて政権を握った朴正煕(パク・ジョンヒ)元大統領(第5・6・7・8・9代大統領、以下、朴正煕氏)は、約15年間にわたり大統領職に留まった。しかし、1979年10月26日、最側近である金載圭(キム・ゼギュ)中央情報部長によって暗殺され、悲劇的な最期を迎えた。韓国で大統領が暗殺されたのは、朴正煕氏が初めてであり、現在も唯一の例である。

朴正煕氏の死後、崔圭夏(チェ・ギュハ)氏が暫定的に第10代大統領の座に就いたが、全斗煥(チョン・ドゥファン、以下、全斗煥氏)元大統領(第11・12代)によるさらなる軍事クーデターにより、わずか8か月で辞任を余儀なくされた。

軍事クーデターによって大統領の座を掌握した全斗煥(チョン・ドゥファン)氏は、1995年末に12・12軍事クーデターおよび5・17内乱の容疑、さらに不法な裏金造成などの容疑で拘束された。また、全斗煥氏の後を継いだ第13代大統領の盧泰愚(ノ・テウ)氏も、内乱および企業から約3,000億ウォンを受け取った贈収賄の容疑で1995年11月16日に拘束された。全斗煥氏は一審で死刑判決を受け、二審では無期懲役と2,205億ウォンの追徴金が確定した。盧泰愚氏には懲役17年と2,628億ウォンの追徴金が言い渡された。両元大統領は約2年間服役した後、1997年12月に金泳三(キム・ヨンサム)元大統領によって恩赦されることとなった。

その後、第14代大統領の金泳三(キム・ヨンサム)氏は自身が拘束されることはなかったものの、アジア経済危機の影響で在任中に検察の捜査を受けた。また、次男の金賢哲(キム・ヒョンチョル)氏は、1997年に韓宝グループへの特恵融資に関連した事件で実刑判決を受けた。

第15代の金大中(キム・デジュン)元大統領は、韓国人として初めてノーベル平和賞を受賞する栄誉に浴したものの、長男の金弘一(キム・ホンイル)氏は、1999年から2001年にかけて人事に関する請託に関連した賄賂を受け取った容疑で有罪判決を受け、2006年には議員資格を失った。また、次男の金弘業(キム・ホンオップ)氏も、1998年から2001年までに現代・サムスンから約25億ウォンを受け取った容疑で実刑判決を受け、三男の金弘傑(キム・ホンゴル)氏もスポーツトトの事業者選定に関与し、賄賂を受け取った容疑で有罪判決を受けた。

一方、在任中、「道徳性」を最大の武器として掲げた進歩派の象徴である第16代の盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領も、退任から1年後の2009年4月30日に「パク・ヨンチャゲート」1に関与したとして検察の捜査を受けるという不名誉な事態に直面した。盧武鉉元大統領は、捜査が進行する中で逝去し、そのため検察の捜査は「公訴権なし」として終了した。

第17代の李明博(イ・ミョンバク)元大統領も、退任から5年後の2018年3月22日に拘束された。彼は自動車部品会社「DAS」の実質所有者疑惑など20件を超える容疑で起訴され、懲役17年が確定したが、2022年末に恩赦を受けた。朴正熙元大統領の長女であり、韓国初の女性大統領として注目を集めた第18代の朴槿恵(パク・クネ、以下、朴槿恵氏)元大統領は、国政壟断などの疑惑により憲法裁判所から罷免されるという不名誉な結果となった。韓国で大統領が罷免されたのは、朴槿恵氏が初めての事例である。

第19代の文在寅(ムン・ジェイン)元大統領は、2018年当時、公共機関長兼企業家であった李相稷(イ・サンジック)元国会議員から、元女婿の徐某氏がタイイースター航空の幹部として採用され、高額の給与や住宅費など金銭的利益を提供されたとして、特定犯罪加重処罰法に基づく贈賄罪の共犯に該当するとして在宅起訴されている(2025年5月5日現在)。

一方、韓国の憲法裁判所は2025年4月4日、第20代の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領が昨年12月3日に「非常戒厳」を宣言したことについて、「軍と警察を国会に投入し、憲法上の権限行使を妨害したことで、国民主権や民主主義を否定し、布告令を出して国民の基本権を侵害した」と判断し、裁判官8人全員一致で罷免を宣告した。現職大統領が弾劾訴追で罷免されるのは、2017年の朴槿恵氏に続いて2人目である。

韓国の大統領は在任中に強大な権力と特権を享受できる地位にあるが、これまでほとんどすべての大統領が辞任、暗殺、拘束、弾劾、自殺などの不名誉や不幸を経験してきた。特に、任期中に大統領が2度も弾劾されたという事実は、大統領制が長く続いているアメリカでも例がない政治的汚点である。