(ブルームバーグ):インドとパキスタンは、米国の仲介を通じて即時停戦に合意した。核保有国同士による4日間にわたる対立がいったん落ち着いた格好だが、早くも双方が相手側による停戦違反を非難し合っている。
トランプ米大統領は10日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、「米国が仲介した夜を徹しての協議の結果、インドとパキスタンが完全かつ即時の停戦に合意したと発表できることをうれしく思う」と述べた。ルビオ米国務長官はXで、両国政府が幅広い課題について中立地帯で協議を開始すると記した。
これより先、インドとパキスタンの間では軍事衝突が激化し、全面戦争に近づきかねない情勢となっていた。双方の側で数十人の民間人が死亡したことを受け、中国やサウジアラビア、主要7カ国(G7)などは、インドとパキスタン両国に対話を促していた。
即時停戦で合意には至ったものの、インドのビクラム・ミスリ外務次官は10日遅くの会見で、パキスタンによる度重なる停戦違反を非難。「国境や実効支配線(LOC)沿いで違反が繰り返された場合には断固たる対応」を取るようインド軍は指示されていると警告した。
一方、パキスタン側は停戦違反を否定。同国外務省は声明で「パキスタンは合意された停戦を誠実に履行することに引き続き尽力している」とし、「一部地域でインドによる違反が発生しているが、パキスタン軍は責任と自制をもって対応している」と主張した。
緊張が最初に高まったのは4月22日。ジャム・カシミールで武装勢力が民間人を襲撃し、26人を殺害した。インドはこれをテロ行為と非難し、パキスタンの関与を主張。ただパキスタン側は関与を否定している。
今週に入り、インドがパキスタン領内の「テロリストの拠点」に対して軍事攻撃を実施し、事態は急激にエスカレートした。攻撃は9カ所の標的に対して行われ、パキスタン軍は31人の民間人が死亡したと発表。パキスタンはその後、報復としてインド機5機を撃墜したと明らかにした。また両国とも、互いの領土に向けてドローン(無人機)やミサイルによる攻撃を行った。

インドのジャイシャンカル外相はXへの投稿で停戦を確認し、「インドは一貫して、あらゆる形態のテロに対して断固たる姿勢を維持してきた。今後もそれを継続していく」と述べた。その後の記者会見でインド軍は、保有するロシア製ミサイル防衛システム「S400」がパキスタンの中国製戦闘機によって損傷を受けたとの一部報道を否定。その上で、インド軍はパキスタン側の複数の資産を破壊したと述べた。
パキスタンのダール副首相も停戦を確認し、「パキスタンは、自国の主権と領土保全に妥協することなく、常に地域の平和と安全に取り組んできた」と記した。シャリフ首相は10日、国民に向けて演説を行う予定。
オブザーバー研究財団のフェロー、マノジ・ジョシ氏は「双方とも国内向けには勝利を主張するだろう」としつつ、「実際に何が起きたのかを知るのは難しい」と述べた。
インドのミスリ外務次官は声明で、同国とパキスタンの軍事作戦部長が12日正午に再度協議すると述べた。
原題:India, Pakistan Reach US-Backed Truce Though Clashes Erupt Anew(抜粋)
(停戦違反を双方が非難との情報を追加します)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.