基礎年金の底上げはなぜ削除された?
TBS報道局 政治部 長田ゆり:
全ての国民が受け取る基礎年金の減少は、年金制度の破綻に繋がる大きな問題です。

当初、政府が考えていた改革案は、約3割目減りする基礎年金の減少分を会社員や公務員が積み立てている厚生年金の積立金から当てる形で補い、目減りする3割分を補填するという計算になっていました。
しかし、ここで影響が出るのが、今、厚生年金を受け取っている人たちの一部で、受け取る額が減少・目減りするということが起きてしまいます。
これに対してある厚生労働省の幹部は、「次世代のために我慢して欲しいと政治家が語れるかどうかだ」と話していました。
ところが、2025年夏に参院選挙が控えているため、主に自民党の参議院議員らが「厚生年金の流用なのではないか」と国民から批判されることを恐れて、今回、大事な改革案が法案から削除されてしまったのです。
井上キャスター:
少子高齢化が進んでいる中、持続可能な年金制度に変えていくためには痛みを伴うであろうということは誰しもがわかっている。
その一方で、政治家からすると、目の前の選挙に勝つことに頭がいっぱいで耳の痛い話をしたくないということで、最終的に腰砕けになってしまうということを繰り返している気がします。

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
比較的、自民党の支持者が多い自営業者の国民年金を増やすために、無党派層が多いサラリーマンの厚生年金を下げる。
ちょっとでも批判され、騒がれることを選挙前は避けたいという議員心理なんですが、そのために年金の抜本的な持続可能性がかなり低下しました。
とりわけ、今の物価高の中、国民年金の月6万円程度で生活することは不可能です。このような状況をどのように底上げしていくかが先送りになっています。
井上キャスター:
全体の制度設計をしていくためにバランスを整えなきゃいけないというのは頭ではわかりますが、厚生年金のために納めていたものが、別に使われるということで批判が出るのは、わからなくないなという感じがします。
出水キャスター:
それだけ聞くと、「私たちの取り分が減るからやめてよ」となりますが、例えば、具体的な金額や、「どうしてそれが今大事なのか」ということが国民に伝わっていないから、それすら議論できてないというところに問題がある気がします。
井上キャスター:
基礎年金の減少分は厚生年金以外で賄える可能性というのはあり得るんですか?
TBS報道局 政治部 長田ゆり:
厚労省が他に検討していた案としては、「基礎年金の納付期間を40年間から45年間に延長して財源を確保する」という案も検討されていたんですが、社会保険料の負担がそれだけ長く増えることになるので、それも見送られているという状況です。