(ブルームバーグ):米アップルが1日発表した1-3月(第2四半期)決算では、関税コストの急増や中国での成長鈍化など、同社が抱える主要な課題を巡る投資家の懸念は払拭されなかった。
中国での売上高は市場予想に届かなかった。アップルは関税が今四半期のコストを押し上げる見通しも示し、地政学的緊張の影響が顕在化しつつあることを浮き彫りにした。株価は一時4.2%下落した。
同社は四半期決算に関する電話会見で、4-6月(第3四半期)に関税措置に伴うコスト増加が9億ドル(約1300億円)に上ると予想した。今四半期の増収率は1桁台前半から中盤になるとした。アナリスト予想の平均は5%だった。今四半期より先の関税の影響についてはガイダンスを公表しなかった。
ティム・クック最高経営責任者(CEO)は会見で、「これまで通り、思慮深く熟慮した上での判断で経営し、長期的な投資に重点を置く」と述べた。
発表資料によると、1-3月期の中国売上高は2.3%減の160億ドル。アナリスト予想は168億3000万ドルだった。
中国売上高が予想を下回ったことは、かつて成長市場だった同国での事業に不吉な兆候だ。アップルはスマートフォンで華為技術(ファーウェイ)や小米などの現地ブランドにシェアを奪われており、中国政府は一部の職場で外国製技術の使用を制限する措置を講じている。アップルは中国に生産を依存しているためトランプ政権が発表した関税措置の影響を特に受けやすい。

同社は決算発表の中で、自社株買い戻しプログラムの規模を最大1000億ドル拡大する計画も明らかにした。四半期配当を4%引き上げ1株当たり26セントとする計画も公表した。
1-3月期の同社全体の売上高は5%増の954億ドルとなり、市場予想平均の946億ドルを上回った。同社は当初、売上高の伸び率を1桁台前半から中盤程度と見込んでいた。1株利益は1.65ドルで、市場予想平均は1.62ドルだった。

スマートフォン「iPhone」の売上高は468億ドルと、市場予想の459億ドルを上回った。ただ、前年同期の460億ドルから2%未満の伸びにとどまり、2年前の同四半期の513億ドルに比べて減少した。
「アップストア」や「アップルTV+(プラス)」を含むサービス部門の売上高は12%増の267億ドルで、市場予想と同水準だった。同事業はいくつかの分野で脅威に直面しており、アップストアに関する今週の連邦地裁判断は同プラットフォームの売上高に打撃を与える可能性がある。
同社は「不確実性」を理由に、今後のサービス部門の成長見通しを提示しなかった。クックCEOは電話会議で、価格引き上げに関する発表はないと述べた。
パソコン「Mac」部門の売上高は79億5000万ドルで、市場予想の約78億ドルを上回った。タブレット「iPad」の売上高は64億ドルと、市場予想より好調だった。一方、ウエアラブル端末などを手掛ける部門の売上高は75億2000万ドルで、市場予想平均に届かなかった。
関税は引き続き最大の懸念材料の一つ。アップルは、政権が当初提案した145%の対中国関税を回避する見込みだが、電子機器に対する新たな関税は依然として迫っている。関税を巡る混乱で同社のサプライチェーンは混乱しかねず、値上げを余儀なくされる可能性もある。
同社は既に、米国向けiPhoneの生産を中国ではなくインドで拡大する方向にある。クック氏はインドが現在、米国需要の半分を賄いつつあると説明。米国で販売されるスマートウオッチ「Apple Watch」、ワイヤレスイヤホン「AirPods」、iPad、Macの生産の大部分が、中国よりも低関税率のベトナムで製造されると付け加えた。
同社は四半期決算報告書で、リスクと不確実性として「貿易とその他の国際的な論争」に言及した。
一方で、関税の脅威はアップルに好材料ももたらした。関税による価格上昇を懸念した消費者がiPhoneなどの製品を購入するためアップルの小売店に殺到。こうした売上高は4-6月期に反映される見通し。クック氏は1-3月期には関税による追加需要は生じなかったとした上で、今四半期の影響は正確には分からないと述べた。
クック氏はさらに、米国での製造を拡大する可能性についての質問に回答を避け、今年は数千万台の米国製プロセッサーを使う方針を示した。
原題:Apple Renews Fears About Tariffs, China Slump With Wobbly Report(抜粋)
(最高経営責任者の発言を追加し株価を更新します)
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