三井住友トラストグループ(TG)は1日、傘下の三井住友信託銀行での証券代行部元部長による株式のインサイダー取引事件を受けて、同行の大山一也社長ら計8人の月額報酬を減額すると発表した。

大山社長や法人事業を統括していた当時の田中茂樹副社長、証券代行を担当する樋渡哲也常務執行役員が月額報酬30%を3カ月相当減額するほか、同行の人事やコンプライアンス担当役員らに加え、三井住友TGの高倉透社長が同20%を2カ月相当減額する。

証券代行は上場会社から株式に関する広範な事務を請け負うもので、信託銀行の中心的業務の一つと位置付けられる。この部署の管理職がインサイダー取引の罪で起訴されたことは、信託銀行の根幹を揺るがす事態で再発防止や信頼回復に向けた取り組みが問われることになる。

同日会見した大山社長は「社会的存在意義が問われかねない極めて深刻な事態だと重く受け止めている」と謝罪した上で、「再発防止に向けた取り組みに終わりはない。私が先頭に立ち、信頼回復に全力を尽くす」と語った。

再発防止策としてインサイダー情報管理のシステム化や同情報に接する可能性の高い部署に配属された社員に対する研修強化、コンプライアンス(法令順守)の観点からの評価を人事面で強化することなどを打ち出した。

三井住友信託では、社員がインサイダー取引を行っていないことについては誓約書による自己申告のみで担保しており、証券口座の取引履歴の確認まではしていなかった。

証券取引等監視委員会は今年3月、三井住友信託で証券代行営業第二部長を務めていた片山肇社員を金融商品取引法違反(インサイダー取引)の疑いで東京地検に刑事告発し、その後、在宅起訴された。

監視委の発表によると、片山元社員は2022年10月下旬ごろから24年8月上旬にかけて、株式公開買い付け(TOB)の情報を業務を通じて事前に知り、公表前にカッシーナ・イクスシー、サンウッド、JTOWERの3銘柄をそれぞれ買い付けた。同社員は昨年11月に懲戒解雇された。

きょうの会見で調査委員会の榊原一夫委員長(元大阪高等検察庁検事長)は「三井住友信託の組織性は認められない」と説明。一方で、松山遙委員(弁護士)は「信託銀行の部長職によるインサイダー事案で金融機関全体の信頼を揺るがす重大な事案だ。会社は属人的な要因による不正行為と矮小化せずに再発防止に取り組んでほしい」と述べた。

調査委の報告書によると、元社員は合計で約2933万円の利益を得ていた。また、3銘柄の買い付け以外にも、事前にTOB情報を得て、別の1銘柄を信用取引で買い付けていたことも明らかになった。結果的にTOBは行われず、約82万円の損失が出たという。

(記者会見の内容などを追加して記事を更新します)

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