ソニーグループ株が30日の東京株式市場で人気化した。半導体子会社の株式上場を前提としたスピンオフ(分離・独立)を検討しているとの28日夜の報道を受け、アナリストからは実現すればポジティブだとの声が上がった。

ソニーG株は寄り付きから買い注文を集め、一時前営業日比7.3%高の3777円を付ける場面があった。終値は同7.1%高の3771円、出来高も約2977万株と前営業日の約1080万株から大きく膨らんだ。

ソニーセミコンダクタソリューションズは年内にも上場する可能性があり、ソニーGは親会社が子会社の一部株式を保有し続けられる「パーシャルスピンオフ」と呼ばれる手法の活用を考えていると、事情に詳しい関係者が明らかにした。両社の広報担当は憶測による記事であり、そのような具体的な計画はないと述べた。

アナリストからは好印象との声が上がった。シティグループ証券の江沢厚太氏は29日付リポートで、金融事業のスピンオフを控える中で同時期の可能性は低そうだとした上で、半導体事業のスピンオフの合理性も高く、仮に実現すれば株価評価にポジティブだと述べた。 ジェフリーズ証券のアナリストのアツール・ゴヤール氏もリポートで、事実なら歓迎し、市場も歓迎するだろうと述べた。

ソニーGは近年、ゲームや音楽事業が好業績をけん引しており、コンテンツの知的財産(IP)の買収を進めるなどエンターテインメント関連を強化している。画像センサーで世界トップシェアを維持する半導体事業は、デジタルカメラや家庭用ゲーム機「プレイステーション」など自社製品にも使われており重要な事業だが、ゴヤール氏はソニーGが純粋なエンタメ企業になれば、より高い株価収益率(PER)を期待できるとする。

SMBC日興証券の桂竜輔氏もリポートで金融事業同様、株主への現物配当となれば株主還元強化とも捉えられ、ポジティブな印象だろうとした。

ブルームバーグ・インテリジェンスの若杉政寛シニアアナリストは29日付のリポートで、ソニーGが半導体事業をスピンオフした場合、その評価額は5兆-7兆円に達し、企業価値対EBITDA(利払い・税金・減価償却・償却控除前利益)倍率がTOPIX平均の10倍や、S&P500平均の14倍に近い水準になる可能性があると指摘した。

若杉氏は、半導体部門のスピンオフにより、ソニーGはゲーム、音楽、アニメ、映画などのエンターテインメントコンテンツ事業への資源集中が可能となる一方で、半導体事業も投資における柔軟性が高まると期待されるとした。

半導体事業の前期(2025年3月期)の営業利益は、前の期比29%増の2500億円を計画していた。2月の決算発表では、スマートフォン市場はグローバルで緩やかな回復基調が続き、画像センサーの販売も想定通り進んでいると説明していた。

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