(ブルームバーグ):28日に投開票が行われたカナダ総選挙では、与党・自由党の勝利が確実となった。カナダ銀行や英イングランド銀行の総裁を務めたマーク・カーニー氏が政権運営を担う。同氏は今回の選挙戦で、経済成長の促進に加え、貿易戦争でトランプ米大統領に立ち向かう姿勢を強調していた。
続投が決まったカーニー首相は、トランプ大統領と29日に話す見通しだとラジオ・カナダが伝えた。電話協議の具体的な時間や、すでに行われたかどうかについては明らかにされていない。
開票率が99%を超えたオタワ時間29日午後0時07分(日本時間30日午前1時07分)時点で、自由党は168議席で当選またはリードしている。最大野党・保守党の144議席を上回っているが、下院での過半数に必要な172議席には届かない恐れがある。

その場合、予算などの法案通過には他党との協力が不可欠となり、フランス語を話すケベック州でのみ候補者を立てているケベック連合がキャスティングボードを握る可能性がある。
民間部門から政治家に転身し、約3カ月半で著しい成功を収めたカーニー氏は29日未明、高揚した様子でオタワで支持者らに挨拶した。
ただ、同氏は演説で、野心的な公約を実現するために他党との取引や妥協を余儀なくされるかもしれない難しい現実にも言及した。
「自分や自由党を多くの人が選んだが、極めて多くの市民はもっと別の結果を望んでいた」とカーニー氏は述べ、「議会内の全ての政党と建設的に協力する」と続けた。その上で、ケベック州のフランス語の重要さ、保守的な石油産出地域との意思疎通の難しさを指摘し、新民主党(NDP)の「進歩的な価値観」を称賛した。
今回の選挙戦に大きな影を落としたのはトランプ米大統領だった。カーニー氏は、カナダを「エネルギー超大国」に押し上げるなど、経済的な独立の強化に注力すると支持者に約束した。
「われわれは米国の裏切りという衝撃を乗り越えたが、この教訓を決して忘れるべきではない」と語った。
ピエール・ポワリエーブル氏率いる保守党は、カナダ最大都市トロントの郊外などで支持を伸ばし、世論調査が予想していた以上の接戦となった。トロント市があるオンタリオ州は自動車や鉄鋼など、トランプ政権の関税政策の標的となっている主要産業の拠点。一方、自由党はケベック州で8議席を獲得する見通しで、大西洋側の4州では依然として優位性を保っている。
原題:Carney Wins Canada Election for Mandate to Deal With Trump (5)、Canada’s Carney to Speak to Trump Tuesday, Radio-Canada Reports(抜粋)
(第2段落にトランプ氏との協議に関する情報を追加します)
--取材協力:Melissa Shin.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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